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鎌倉版 公開:2020年9月18日 エリアトップへ

「GIGAスクール推進で、授業をアウトプット主体に」 鎌倉市教育委員会教育長 岩岡寛人さん

社会

公開:2020年9月18日

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兵庫県出身。家族は妻と小5、小3の娘。杉並区の自宅から1時間半かけて鎌倉に通勤中。趣味はアメリカ留学時代に始めたウエイトトレーニング。
兵庫県出身。家族は妻と小5、小3の娘。杉並区の自宅から1時間半かけて鎌倉に通勤中。趣味はアメリカ留学時代に始めたウエイトトレーニング。

 鎌倉市の教育長にこのほど、岩岡寛人さん(35)が就任した。市として初となる文部科学省からの起用。「児童生徒一人ひとりにタブレット端末を配布」など、教育現場におけるICT環境の整備を目指す国の「GIGAスクール構想」の推進が期待されている。

――35歳の若さで教育長に。オファーを受けた理由を教えて下さい。

 「文部科学省では小中一貫教育の制度設計を担当していましたが、国の施策というのはどうしても実現までに時間がかかります。社会が変化するスピードが速くなっているなか、国が方針を決めて下ろしていくやり方では、対応しきれない時代が来ていると思っていました。そうした時に、自分のかいた汗がすぐに子どもたちに届く仕事ができることにすごく興奮しましたし、まさに今やるべきだと思ってお引き受けしました」

――新型コロナウイルスの感染拡大により休校や分散登校が続いたことで、「GIGAスクール構想」が大きく注目されています。

 「実はGIGAスクールについて、現在の報道等では本質がちょっと変えられて伝わっているのではないか、と思っています。保護者の皆さんからも『タブレットでオンライン授業をやるんですね』と言われるのですが、この構想が目指しているのは、ICTの活用で学びを変えるということです」

次代に必須の能力

――具体的にどのようなことでしょうか。

 「大きく分けて3つあります。1つは子どもたちの情報活用能力そのものを伸ばすことです。OECD(経済協力開発機構)が、今の子どもたちが大人になったときに求められるコンピテンシー(行動特性)を測るPISA(生徒の学習到達度調査)というテストをやっていますが、その読解の形式が変わってきました。これまで国語では正しい前提の文章が与えられて、それを正確に読み解くのが一般的でした。しかし今は、色々な情報から何が課題で何が真実なのか、情報機器を活用しながら自分で整理していくことが求められるようになっています。日本の子どもたちは学校で情報機器を使っていなかったこともあり、読解力の順位が下がってしまった。今ではICTを活用して情報を整理したり、表現できること自体がこれからの時代に必須の能力で、それ自体が学力になるというように考えが変わってきました」

 「2つ目は子どもに合わせた学びが提供できるということです。例えば文字が読みにくい『ディスレクシア』といわれる学習障害の子の教材にふりがなをふったり、弱視の子には読み上げ機能をつけることで、国語の授業に参加できるようになります。子どもたちの認知や個性に適応できるのがデジタル教材なんです。今は障害を例にしましたが、二次方程式が解けない子が実は分数の割り算でつまずいていた、ということがあります。こうした課題は教師の『気合と勘』で把握するしかありませんでしたが、今後はビッグデータを積み重ねていくことで的確に把握して教材をカスタマイズできるようになる。この『個別最適化』を進めることが2つ目の目標です」

 「さらにその先にあるのが『アウトプットを主体にした授業に変える』ということです。今の授業は、チョーク&トークと言われるスタイルで、先生が黒板に書いた内容をノートに写してほとんど授業が終わってしまいます。話し合ったりまとめたりするのは最後の5分か10分です。しかし本来学校は、インプットよりもアウトプットに適している環境なんです。ですから子どもたちにもっと主体的に、アウトプットをやってもらいたいという思いがあります。今想定しているGIGAスクールでは、各教室の前方に大型ディスプレイを置きます。先生は板書という作業がなくなり、子どもたちも教科書から目を離して自然に前を向くので、先生と子どもたちがずっと対面して互いに会話のキャッチボールを進める状況が作れます。その上で子どもたちには、ノートに自分の考えを書いてもらいたいと思います。また『グループで考えをまとめてみよう』という活動でも、これまでの模造紙に何時間もかけて作っていたものよりもずっと効率的で美しいものができる。授業をインプット中心からアウトプット中心に変えることができることこそが、この取り組みの要だと思っています」

端末「今年度中に」

――鎌倉での進捗を教えて下さい。

 「すでに小6と中2、3年生にタブレットを配布し終えていて、他の学年も今年度中に配布します。また各教室への大型ディスプレイやWi-Fiも今年度中に整備する予定です。合わせて教員の研修なども進めます」

――鎌倉ならではの取り組みはありますか。

 「鎌倉は歴史や文化、自然が豊かです。こんなにリソース(資源)にあふれた場所は日本中ほとんどありません。子どもたちにはまちを縦横無尽に駆け回ってもらい、タブレットでインタビュー動画を撮ったり、解説書をつくったりしてほしい。学校と地域と家庭がシームレスにつながった、アウトプット主体の授業を作っていきたいと思っています」

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