戸塚消防署の岸信行署長=写真下=が産学官連携で共同開発を進めてきたVR(※)教育訓練システムが6月8日、初めて一般公開された。今年度中に製品化し、全国の消防施設などに導入される見込み。日本初の取組みに岸署長は「足掛け5年、ようやく日の目を見ることができ嬉しい」と語る。
隊員の経験不足改善へ
昨年4月に戸塚消防署長に就任した岸署長。前任は区内にある消防訓練センターの管理・研究課長で、以前より消防士の経験値不足を懸念してきたという。「全国的に知識や経験を積んだベテラン消防隊員が減少し、経験の浅い若年層の隊員が増えた。一方で、火災件数は毎年6%から8%程度の減少傾向にある」と岸署長。実際の現場に赴くことが少なくなっている状況を解消するために思いついたのが、低コストで危険もないという、今回のVRによる教育訓練システムだった。
開発を考えた一方で、実現化に向けた伝手(つて)がなかったことから、2018年に岸署長が自ら大学や民間企業に飛び込みで「営業」をスタート。意外にも順調に話が進み、東京大学などが快諾。民間企業の技術支援を受けながら、東京理科大学の実験棟で火災現場を再現。火の燃え方や温度、煙、映像などを詳細に記録し、測定データをVRに移行する国内初のシステムを開発した。
20年には両大学と製品開発を担う(株)理経、市消防局とで契約を締結。昨年からは戸塚消防隊員が検証実験に参加し、現場の声を反映させながら、現在の形に完成させた。
チームで火災現場体感
開発されたシステムは6月、市内で「横浜国際消防・防災展」が行われた際に一般公開された。
訓練は専用のゴーグルを着用して行う。VRシステムを搭載する20kgのコンピュータを背負い、実際の放水装置を手に持つことで「重さを感じる」現場を忠実に再現しているのが特徴。また、複数人で共通の映像を見ることができるため、現場で重要なチームワーク感覚も養える点も他のVRにはない。火を忠実に再現したものは世界でも例がないという。
岸署長は「今後全国に広がっていくだけではなく、実際に市民の皆さんも体験できるようになるのでは」と説明し、「映像に映し出される火の燃え方や煙、熱の動きなどリアルな状況を通じて、危険意識向上にもつながるはず」と力を込めた。
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