品濃町に営業本部ビルを置く(株)有隣堂の松信裕代表取締役会長兼社長(74)がこのほど、県書店商業組合の理事長に就任した。「書店はより個性を出していくことが必要。それをリードしていきたい」と抱負を述べる。
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県書店商業組合は県内の約170店舗が加盟。書店どうしの連携を通した業界振興などを目的に活動している。松信氏の理事長就任は今夏行われた総会で決定した。
書籍の販売額は1996年をピークに減少の一途をたどっており、歩調を合わせるように書店もその姿を消している。松信理事長は「必ずしも活字離れは起こっていない。インターネットの文章は多く読まれている」との認識を示しつつ、情報がわかりやすくまとめられたサイトを読みすぎるのは「危険」と指摘。「本当に人の血肉になるのはやはり読書」と話す。
だからこそ、書店を無くしてはいけないという思いは強い。今後書店に必須となるのが「個性ある店舗づくり」だ。「どの本屋に行っても同じような書籍が並ぶ状況を変えていくことが必要」とする。
その理由として「書店を取り巻くシステムに課題がある」という。
一般的に書店は、仕入れた書籍が売れ残った場合、出版社に返品できるシステム(委託販売)をとっており在庫のリスクがないというメリットがある。その一方で、出版元から定期的に届けられる書籍を「ただ店頭に並べるだけ」という状況が生まれやすいと説明する。
生き残りに挑戦を「本の販売続けるため」
本が売れるかどうかは「出してみないとわからない部分がある」と松信理事長。そのため予想は難しいが、書店を取りまく厳しい状況を踏まえると、在庫リスクを負ったうえでも自ら本を選んでいくことが求められるとする。「店舗の地域性を考え、工夫を凝らしてほしい。当社で実践しリードしていくことも私の仕事だと思う」と語る。
多角経営に踏み切る
松信理事長は1999年に有隣堂の社長に就任。当時多額の負債があったことから、多角経営に舵を切った。
事務用品通販の代理店事業を始めた際は批判もあったが、今では経営の土台となる売り上げ幅となっている。カルチャーセンターの展開のほか、今春には都内に「ヒビヤセントラルマーケット」という複合施設をオープン。書店はもちろんアパレルや飲食、理容店まで多様な店が並ぶ空間づくりを行っている。
書籍の売り上げの比率は今後も下がるかもしれないが「本だけはやめるつもりはない」という。「本を売ることは世のため人のため、という考えはどの書店も持っていること。生き残り方にこれという答えはないが、挑戦を続けながら模索したい」と話す。
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