常盤台の横浜国立大学(長谷部勇一学長)が1924(大正13)年から所有しているドイツ製のグランドピアノの音色を復活させようと、インターネット上で出資者を集う仕組み「クラウドファンディング」(CF)に挑戦している。修理に必要な費用は130万円で資金協力の受付は5月18日まで。4月25日現在、71万6千円の寄付が寄せられている。
ピアノは同大学の前身となる横浜工業学校が開校して間もない1924年に当時の鈴木達治校長が学生の課外活動用にと7千円で購入した。ドイツ・ベヒシュタイン社製のグランドピアノで当時は東京音楽学校(現・東京芸術大学)と首相官邸にしかなかったという希少な名器だ。
進駐軍に接収
およそ1世紀にわたり音色を奏でてきた名器は激動の時を過ごしてきた。戦時中、戦災は逃れたものの、終戦直後に進駐軍が接収。学生たちが必死に所在を調べて回ったところ、東京・丸の内の将校クラブで使われていることが分かった。教授を通して連合国軍総司令部(GHQ)に返還を求め、47年に横浜の地に戻された。
焼失の危機
翌年、今度は収納されていた講堂で火災が発生。講堂は全焼したものの、近くの寮生らが救出した。しかし搬出時に足が折れてしまい、その後はそのままの状態で戦後に立ちあがった同大の男声合唱団「国大グリークラブ」の練習などに使われてきた。
数奇の運命をたどりながらも100年近く常盤台のキャンパスに悠久の音色を奏でてきた名器は、98年に大掛かりな修理・調律を行い、その後は大学内にある教育文化ホールに記念保存・展示すると共に音色を鑑賞する機会を設けている。
130万円を捻出
修理から20年の時が経ち、本来このピアノが持つ音色を奏でることが難しくなってきたことから、同大では専門業者に調査を依頼。すると全ての部品を解体し、主要な部品を交換したり、補修などを行う必要があることが判明した。
後世に残すべく最低限の調律などを続けてきたが、今回の大規模な修理に必要な費用は約130万円。多額の費用を捻出することはできず、たどり着いたのがネット上でプロジェクトへの賛同者から寄付金を募るCFだった。
寄付金の受け付けは3月下旬からスタート。4月25日時点で61人が賛同し、約72万円が集まっている。
長谷部学長は「購入当時、横浜で1台しかなかった貴重なこのピアノを地域の財産として未来に伝え、地域貢献の一環として運用していくためにも、皆様のご支援をよろしくお願いします」と話している。
演奏できる権利も
CFでは事前に設定した目標金額に1円でも満たなかった場合、賛同者に返金される仕組み。寄付額に応じて「修復したピアノを見て、触って、聴くことができる権利」や「ピアノを演奏できる権利」といった返礼を受けられる。プロジェクトへ賛同し寄付を希望する場合は専用のウェブページ(【URL】https://readyfor.jp/projects/ynu-cf001)から。
問合せは同大学総務企画部学長室【電話】045・339・3038へ。
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