川崎市内のホームレスが15年連続で減少している。今年1月の調査では前年比12人減の120人で、5年間で半減した。市の「自立支援実施計画」をもとに、市から事業委託された巡回相談員やNPOが個々の状況を把握し必要に応じて市の支援につなげるといった、地道な官民の連携プレーが結実している。
川崎では最大で1038人(2003年)のホームレスが確認されていた。市はホームレスに関する課題解決を目的とする「ホームレス自立支援実施計画」を策定し、5年ごとに練り直して自立に向けた支援に取り組んできた。
今年3月までの「第4期計画」では、自立支援センターでの生活になじめない人を民間のアパートなどで支援する「訪問型事業」や、ネットカフェや24時間経営の漫画喫茶などにチラシを置くことで、不安定な居住環境にある「予備軍」への情報提供などを実施してきた。
市の担当者は「第4期の取り組みで一定の効果はあったと認識している」と総括する。24年度からの「第5期」では、高齢のため生活が難しくなった人を介護サービスにつなげる「高齢化対策」や「予備軍」への情報提供に一層、力を入れていくという。
信頼関係を構築
実施計画を進めるうえで重要なカギを握るのが、自立支援センターなどの市の支援施設と、巡回相談員やNPOとの密な連携だ。現在3人の巡回相談員たちは週5日、約20カ所ほどの生活拠点を訪ねて回るほか、毎週水曜日夜にはNPOのメンバーが深夜に主要駅のバス停を巡回する。いずれも個々の状況を把握するために信頼関係を構築し、必要な場合はセンターや医療など、支援や福祉につなげてきた。
今年5月初め。巡回相談員たちは市内の公園内に暮らす男性を訪問した。男性はその公園があるエリアで10年ほどホームレス生活を送るが、現在は公園内の藪に落ち着いている。蚊や虫が飛び交う中、3人の相談員は男性と15分ほど話をしたのち、藪から出てきた。「元気そうでした」。主任相談員の木田豊一さんは安堵の表情を見せた。
一方で木田さんは「全体的にホームレスの人たちが高齢化している」と表情を曇らせる。年に一度は健康診断も受けられ、自立支援センターでの洗濯や入浴もできる「リフレッシュ事業」も続く。それでも元気だった人が突然、亡くなるケースにたびたび直面してきた。「そうなる前に支援につなげたい」と木田さん。市の担当者も、「支援を希望しないホームレスは一定数いるため、『ゼロ』にするのは難しいが、自立に向けた丁寧な支援を続けていく」と話している。
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