鎌倉を代表する老舗蒲鉾店が、これまで利用されていなかった地元の水産資源を活かした新たな惣菜の開発に挑むことになった。先月には事業計画が国の認定を受け、漁協や飲食店、大学などの協力を得ながら、販路の拡大、ブランド化を進める計画だ。
関東農政局、関東経済産業局は2月4日、(株)井上蒲鉾店(牧田知江子社長)が提案した「アカモクと湘南シラス加工品等を活用した蒲鉾惣菜の開発・販売及びブランド化事業」を「地域産業資源活用事業計画」に認定した。
これは各都道府県が指定する地域資源(農林水産物、鉱工業品、観光資源)を活用して、中小企業が新商品、新サービスの開発を行う際に、補助金や専門家のアドバイスを通じて国が支援しようというもの。
同社が提案したのは、鎌倉近海をはじめとする県内でとれる「アカモク」という海藻や、湘南シラスの加工品の「身崩れ」を使用した新しい蒲鉾惣菜の開発と販売。アカモクはフコイダンやアルギン酸といった機能性成分を多く含む上、低カロリー、高繊維質というすぐれた特徴をもっているが、現在はほとんど市場で流通していない。シラス加工品の身崩れも同様に利用方法がなく、これまでは捨てるしかなかった。
こうした未利用の水産資源に目を付けたのが、創業70年以上の歴史を誇る井上蒲鉾店だ。同社では創業以来、冷凍すり身などを使わず、魚からすり身を作り、蒲鉾を作ることにこだわってきた。ただ最近では材料となる魚を地元で安定した量を確保することが難しく、長崎などでとれた「グチ」を使用している。地元産の魚を使用した商品は限定商品として季節ごとに登場する程度という。同社の牧田社長は今回の事業を計画した理由を「鎌倉の蒲鉾屋として、もう一度、地元の水産資源を使った商品を作りたかった」と明かす。
今後は2013年度中を目途に試作品の完成を目指す。現在開発中の商品は「蒲鉾のイメージにとらわれない、すり身を活かした新しいタイプの惣菜にしたい」考えで、地元大学生の意見も取り入れる。
商品化された際には、漁協や飲食店に協力をあおぎ販路を拡大するほか、地元のデザイナー集団と連携したプロモーションを展開したいという。牧田社長は「地域のネットワークを活かしながら、魅力的な商品を開発し、それを発信していきたい」と話している。
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