先月28日、茅ヶ崎市内の交差点で90歳の女性が歩行者をはねて死傷させるなど、高齢ドライバーによる交通事故が後を絶たない。全国の自治体が運転に不安を感じる高齢者に免許の自主返納を呼び掛けるなか、市内でも警察署と民間企業が連携し、制度の活用を促進する活動が続いている。
県警によると、65歳以上の高齢運転者による県内の交通事故は昨年1年間で5529件。全体の21・1%を占め、前年比434件の増となった。
こうしたなか、高齢者の事故防止策の一つとして1998年4月から始まったのが、希望者が自主的に免許取り消しを申請できる「返納」制度だ。
市内の65歳以上の免許所持者は今年5月末現在で2万5364人。前年と比べ54人増えた。
一方、県警運転免許センターの調査では、昨年の市内での自主返納者は829人(うち65歳以上が806人)。今年1月から4月末までの人数は278人(うち65歳以上は272人)で、昨年とほぼ同じペースという。
鎌倉、大船両署では、高齢者やその家族から相談を受けた際に制度を案内したり、高齢者向けの交通安全教室で呼び掛けたりするなどの対策を講じているものの、実際に返納する高齢者は多くないのが現状だ。
身分証無くなる不安も
返納が増えない背景の一つに、身分証明書が無くなることへの不安があるとみられている。
対策として県警では、返納した人のうち希望者に身分証明書として利用できる「運転経歴証明書」を交付している。
2009年には、民間の企業や店舗との連携を開始。商品を購入したりサービスを利用した際に証明書を提示すると、割引などの特典を受けられる取り組みを始めた。
市内でも既に10店ほどで実施されている。そうした店舗の一つ、スーパーマーケット「スズキヤ西鎌倉店」では、昨年から証明書の提示者に一部商品を除き買上本体合計金額から5%割引するサービスをスタートさせた。
現在の1カ月利用率は全体の客数の0・7%にとどまるというが、同店の吉田徹店長は「まだ利用者は少ないが、事故予防策として、自主返納のきっかけになれば」と話していた。
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