鎌倉市をはじめ神奈川県、横浜市、逗子市の4県市は5月27日、共同声明を発表し、世界遺産登録を目指してきた「武家の古都・鎌倉」のユネスコへの推薦取り下げを文化庁に要請した。イコモスによる「不記載」勧告を受けたもの。4県市は「引き続き登録に取り組んでいく」としているが、再挑戦には遺跡の調査・研究の強化に加え、渋滞や災害への対策、コンセプトの練り直しが不可欠で相当の時間を要することになりそうだ。
この日、4県市の首長が神奈川県庁で会見。推薦取り下げの理由について、イコモス勧告が「(世界遺産登録に関する)基準に適合せず、顕著な普遍的価値が証明されていない」とするなど厳しい内容であったこと、評価の「格上げ」に向けて議論を深められるような要素が見当たらないことを挙げ、「今回は推薦を取り下げ、改めて挑戦することが実現への最善の道」と判断した。地元の意向を受け、文化庁も推薦を取り下げる方針だ。
黒岩祐治知事は「勧告の結果は全く想定していないもので、審査基準が厳しくなっていることを痛感した。鎌倉には世界遺産にふさわしい歴史的、文化的な魅力が十二分にあり、いずれ登録できると確信している」として「登録に向けた熱が冷めないうちに再挑戦したい」と話した。
「調査・研究を強化」
「撤退ではなく再出発だと考えている。よりよいまちづくりのきっかけとし、世界遺産登録の目的である歴史的遺跡の保護に関する思いを市民と共有したい」。共同宣言の翌日、市役所で報道陣の取材に応じた松尾崇市長は、記者の質問に答え、登録に再挑戦する意向を改めて明らかにした。
イコモス勧告は鎌倉の構成資産における精神的、文化的側面を評価する一方で、市街地や当時の生活、政権の権力を示すものについて「ほとんど証拠がない」と指摘。また周辺の都市化や地震、風水害など災害対策の不備への懸念を示した。
市は源頼朝が鎌倉に入って最初に幕府を置いた場所とされる「大倉幕府跡」(市内雪ノ下)などを念頭に、埋蔵文化財の調査・研究を強化するとともに、開発規制の拡大や渋滞、災害対策を進める考え。
市としてはこうした課題の解決を目指しながら、これまで「武家の古都」としてきた登録のコンセプトそのものを、専門家などとともに練り直すことになる。「すぐにというのは難しい」として具体的な時期には言及しなかった松尾市長。「再挑戦」には高いハードルが待ち受けている。
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