鎌倉平和推進実行委員会(浦野昭子委員長)はこのほど、市と協働で行っている平和推進活動の一環として、市内在住の沖縄戦体験者の証言を記録したDVDを製作した。戦争を体験した世代の高齢化が進むなか、その記憶を次世代に受け継ぐことが狙い。DVDは市立小中学校と市内の各図書館に寄贈され、総合学習等での活用や市民への貸し出しが行われる。
鎌倉平和推進実行委員会は「平和都市宣言」及び「鎌倉市民憲章」の精神に基づき、1996年に発足した。現在は公募市民7人が、平和の大切さや地球環境保全を考えるための平和推進事業を市と協働で企画・運営している。
事業の柱となっているのが、2000年度から開催している「出前講話・平和」。夏を中心に講師を小中学校へ派遣し、戦争体験などに関する生の声を伝えている。2008年から13年までの5年間で計72回開かれ、約1万8千人が聴講。今夏は15日までに7回実施された。
貴重な証言次世代に
浦野委員長によると、委員の間でDVD製作の話が持ち上がったのは昨年春ごろ。「戦争を知らない世代が増えると同時に、戦争を体験した人々の高齢化が進んでいる。このままでは貴重な証言が次世代に引き継がれないのでは、という危機感があった」と話す。
そこで2001年から「出前講話」で自身の沖縄戦の体験を語り続けてきた、新垣秀雄さんの証言を記録することを決めた。インタビューは昨年11月、吉屋信子邸で行われた。
極限の戦場生き抜く
新垣さんは1927年、沖縄県中城村に生まれた。45年3月、17歳の時に学徒兵として従軍し伝令を務めた。捕虜になり終戦を迎え、沖縄で教師として定年まで勤めた後、家族が住んでいた鎌倉に移った。89年には沖縄戦を短歌に詠んだ「傷痕」を発行し、沖縄タイムス社の芸術選賞文学部門で大賞を受賞している。
「新垣さんは、いつも命の大切さを説いてから自身の沖縄戦の経験を話し始めた。どんな状況でも生きる努力をすることが大事だと伝えることが、使命だと感じているのでは」と浦野委員長は話す。
DVDは今年3月に完成。市立小中学校25校と各図書館に寄贈された。販売の予定はなく、図書館での貸出を受け付けている。内容は教材としての利用を想定して1時間に収めたが「収録した映像と証言は膨大な量になった。編集作業はみんなと協力して、必要な箇所が抜けないように何度も確認しながら進めた」という。テロップを入れるなどの工夫もした。
同委員会では今後も「出前講和」で話をしてきた人の証言DVDの製作を進めていく予定だという。浦野委員長は「次世代に伝えていくために記録を残していきたい」と話した。
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