耐震改修を実施した既存の建物のなかで、耐震性、防災・安全性、意匠等に優れた建築物とその関係者に贈られる「耐震改修優秀建築・貢献者表彰」。同表彰にこの度、市内大町の清興建設株式会社が手掛けた湯浅物産館が選ばれた。同社の石渡好行社長は「鎌倉の街並みを生かしつつ有効利用を図る一つの指針となれば」と話している。
同表彰は耐震改修をした優れた建築物を広く公表することで、健全な建築業界の形成に貢献することを目的に一般財団法人日本建築防災協会が実施するもの。5回目となる今回は湯浅物産館のほかに、東京タワーや新宿三井ビルディング、京都大学百周年時計台記念館などが選ばれた。受賞7件のうち、木造建築は同館のみとなる。
戦前から残る看板建築
湯浅物産館は若宮大路の西側に位置する木造2階建ての商店建築。1897(明治30)年に「湯浅商店」として創業し、貝細工の製造加工や卸売を行っていたという。しかし1923(大正12)年に発生した関東大震災で焼失。2年後に仮店舗で営業を再開し、36(昭和11)年には現在の店舗が新築された。
戦前の商店建築としては鎌倉で最大の規模となる同館は、建物の前面に看板を兼ねた外壁を持つ「看板建築」という様式を採用。タイルと連なった半円形の装飾窓で構成された洋風の面持ちが特徴で、建物のほぼ中央に吹き抜けを配置している。
2003年には、「創建当時の姿が残されている」として、市の景観重要建築物に指定された。
ディスプレイ棚で強化
同館は近年、外部のタイルが剥落するなど老朽化の進行が目立っており、さらに2011年の東日本大震災時には大きく揺れ、倒壊が心配されるようになっていた。そこで同館を所有する湯浅弘邦さんは、(一社)県建築士事務所協会鎌倉支部を通じて清興建設に改修を相談し、14年に工事がスタートした。
同館はもともと壁が薄かったため、ディスプレイ棚を壁面に設置することで店内の広さを維持したまま外壁を補強。道路に面した佇まいをそのままに、耐震性の向上に成功した。
今回の表彰では「最小限の工法で歴史的価値を後世に残せたこと」「内部の空間的リノベーション」の2点が評価された。
石渡社長は、「技術を評価して頂けて、うれしい。これからも鎌倉の大切な景観を守っていきたい」と話した。
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