強い勢力のまま関東地方に上陸し、各地に甚大な被害をもたらした台風19号。鎌倉市内でも稲村ガ崎3丁目の134号線沿い歩道と車道が陥没するなどの被害が出た。その一方で市が台風上陸の前日までに開設した避難所には、15号の時の20倍ちかい1300人超が避難。市は「防災意識の高まりが人的被害の抑止につながったのでは」とする。
市内では10月12日の午後0時から1時までの1時間に鎌倉地域で22・5ミリ、大船地域で26・5ミリの雨量を記録。また同日午後8時から9時までに鎌倉地域で51・0メートル、大船地域で43・4メートルの最大瞬間風速を記録した。
一時、最大1万7900軒が停電、高野地区や西鎌倉では断水も発生したが、けがなど人的被害は報告されていない。
市が14日に開設した臨時相談窓口には、倒木や屋根の破損に関する相談が6件、罹災証明の申請・相談が26件あったほか、コールセンターにも91件の相談が寄せられた。台風により発生したごみについては、減免措置が11月8日(金)まで実施される(問い合わせは市ごみ減量対策課【電話】0467・61・3396へ)。
台風からの強い波を受けて、稲村ガ崎3丁目の国道134号沿いの歩道と車道が陥没。一時、滑川交差点から小動交差点までが通行止めとなった(現在は片側交互通行により再開)。
この場所では8月13日にも高波による陥没が発生。9月30日から復旧工事が始まったばかりだった。県藤沢土木事務所では「歩道と車道の間に土留壁を設ける工事を進めており、この壁ができれば両車線での通行が可能になると考えているが、現時点での見通しは立っていない」とする。
歩道の下には鎌倉地域約1万7千世帯の下水を七里ガ浜浄化センターへと送る下水管が通っている。管に破損等はなかったものの、現在はむき出しになった状態で、市道路課では「県とも連携しながら、早急に補強等を行っていきたい」と話す。
避難者数「20倍」に
今回の台風では、勢力の強さが事前に大きく報道されたこともあり、市には「避難所はいつ開設されるのか」といった問い合わせが相次いだ。そこで市は11日午後6時、市立小学校16校に避難所を開設した。
12日午後9時には、合計で1374人が避難。台風15号が上陸した際には最も多い時でも77人だったことから、約20倍に増えたことになる。
防災メール登録1割増
市総合防災課によれば、9月15日からの1カ月間で市の防災・安全情報メール配信サービスに新規登録した人の数は3040人に上った。現在、同サービス全体の有効登録数は2万9132人で、約1割増えた計算だ。
同課の担当者は「風雨が強い時は防災行政用無線が聞きづらいこともあるが『同時に届くメールで内容が確認できた』という声もあった。台風15号による被害が大きかったこともあり、多くの市民が危機意識を持っていたことが、早めの避難と人的被害の抑止につながったのでは」と話す。
情報提供にAI活用
また市は、市民からの問い合わせ対応として「AIチャットボット」を初めて導入した。
これはメッセージアプリ「LINE」を利用して、避難所の開設情報などの質問に人工知能AIが回答してくれるというもの。同じサービスを提供した茨城県と合わせても登録者数が156人と利用そのものは多くなかったが、市行政経営部IT政策課では「市民にとってはリアルタイムにほしい情報が得られ、職員も災害対応に集中できるなどメリットは大きい。今後も活用を検討していきたい」とする。
寺社の情報を集約
台風明けの13日、14日は連休ということもあり、多くの観光客が鎌倉を訪れたが、なかには観覧や拝観を中止する施設、寺社もあった。
鎌倉市観光協会では、職員総出で聞き取りと現地調査を実施し、約70の寺社仏閣の状況をまとめてホームページに掲載した。同協会は「拝観を中止している寺社にも多くの問い合わせがあったと聞いている。協会が情報を集約して発信することで、復旧作業に集中してもらえたら」としている。
福島県相馬市に飲料水を提供
鎌倉市は15日、福島県相馬市に緊急支援物資として飲料水を送った。
同市市長が全国市長会の会長を務めていることから、同会を通じて要請があったもの。
市が備蓄している500ミリリットル入りペットボトルの飲料水24本が入った箱約400箱(約9600本)を、市消防本部のトラック2台で同市へと運んだ=写真。
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