新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言の発令によって中止となっていたイベントや文化活動が、徐々に再開されている。感染が収束の気配を見せないなか、観客や出演者同士の距離を確保するなど、「新しい生活様式」に合わせた開催への模索が続いている。
芸術館5カ月ぶりの自主公演
鎌倉芸術館小ホールで7月30日、「ランチタイム・コンサート『音楽の力』」が開催された。
鎌倉出身で国際的に活躍するオーボエ奏者、吉井瑞穂さんが出演。集まった約100人の観客は、4本のオーボエ用に編曲したバッハの「シャコンヌ」(無伴奏バイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004より)などの演奏と吉井さんの軽妙なトークを楽しんだ。
会場を訪れた脇潤子さんは「約半年ぶりにコンサートに来たが、生で聞く音楽は素晴らしく、音が身体に染み込んでくるようだった」と話し、吉井さんは「音楽家は聞き手がいて初めて成立する。私たちに何が求められ、どうすれば音楽を届けられるのか考えていきたい」と振り返った。
同館としては約5カ月ぶりの自主公演となったこの日コンサート。対応するスタッフはフェイスシールドを着用。来館時には検温と消毒を行い、接触を避けるためにチケットの半券を切ったり、プログラムを取ることは来場者自身が行うなど、徹底した感染対策が取られた。
座席は1席ずつ空け、600席の定員は半分の300に設定。また空調により常時換気されてはいるものの、曲と曲の間で扉を開けるなどして「不安感の解消に努めた」という。
関係者は「再開に向けた第一歩を踏み出せたと思う。まだまだ多くの人が音楽を楽しめる状況ではないが、まずはできることから取り組んで公演を行える環境を整えていきたい」と話す。
同館では8月29日(土)にトランペット奏者の佐藤友紀さん、9月8日(火)にバイオリニストの礒絵里子さんといういずれも鎌倉ゆかりの演奏家が出演するランチタイムコンサートを開催予定。詳細は同館【フリーダイヤル】0120・1192・40へ。
野外のメリット生かし大道芸
梅雨明け最初の週末となった8月1日。梶原にある湘南深沢ワン・パークで「鎌倉Buskers Marche」と題した大道芸イベントが開催された。
当日はマジックやバルーンアート、ジャグリングなどのパフォーマー8人が出演。ファンや近隣から訪れた親子連れなど、幅広い年代の約300人が来場した。
大道芸のステージでは「できるだけ近くに集まって」と呼びかけるのがお決まりだが、パフォーマーと来場者は普段の2倍ほどの距離をとり、観覧の際もなるべく間隔を空けた。
このイベントを企画したのは、鎌倉市内に実家があるクリスタルマジシャンMichelさん(26)だ。
Michelさんはクルーズ船や海外でのショーなど、国内外で水晶玉を使ったパフォーマンスを披露している。
例年、近隣エリアでは、江の島やみなとみらいなどで多くの大道芸イベントが開催されているが、コロナ禍でほぼ全てが中止に。収束の見通しも立たないなか「新たな形でイベントが開けないか」と考えるようになったという。
そうした思いに賛同したのが、会場となった「ワン・パーク」のオーナー紺野昭彦さん。同施設はもともと、ドッグランや遊具のある地域の「多目的公園」として2019年6月にオープンしており、紺野さん自身もこれまで地元の企業やパフォーマーと共にイベントを実施してきた。
「この場所が地域の集いの場として定着してほしいという思いがあった。コロナ禍の今、『密』になりにくい野外という武器を最大限に生かして、定期的な開催につなげていけたら」と紺野さんは話す。
構想から開催まで約1カ月。短い準備期間ながら、知人を通じて募ったパフォーマーやマルシェへの出店者は20組を超えるなど、手ごたえを掴んだという。
「パフォーマーだけでなく、地域の人にとっても久しぶりのエンターテイメントの機会だったはず。鎌倉から、屋外エンターテイメントの新しい形を提案していきたい」とMichelさん。
第2回は10月17日(土)の開催を予定している。詳細はMichelさんのメールhello@michel-magic.comへ。
ディスタンス確保し演奏会
湘南在住の演奏家が集まり、クラシック音楽に親しんでもらおうと活動している 湘南クラシックアーティストパラダイスは8月29日(土)、「ソーシャルディスタンスコンサート」を開催する。会場は鎌倉婦人子供会館ホールで、同団体代表の澤田エリザさんがナビゲーターを務め、ピアニストの齊藤一也さん、黒岩航紀さんら国内外のコンクールで優秀な成績を収める新進気鋭のアーティストが出演する。
完全予約制でチケットレスにすることで接触の機会を減らすほか、本来定員100人のところ入場者を40人に絞って距離を確保、窓を開けて定期的に換気する。
午後2時開演、3千円。詳細は同会【電話】0467・24・5695へ。
好きな作品”投げ銭”で応援
道ギャラリー(雪ノ下1の9の24小池ビル1階)で開催中の「ほっこりアート展」では、気に入った作品を10円から支援できる「投げ銭システム」が導入されて話題を呼んでいる。
アート作品の制作を通じた障害者の就労支援を行っている福祉作業所「道工房」が開設した同ギャラリーは、新型コロナウイルスの感染拡大によって、3月から約3カ月間の閉鎖を余儀なくされた。
6月中旬に再開後もギャラリーを訪れる人は少なく、グッズ等の販売も低迷しているという。
投げ銭は売り上げの確保とともに「制作者の励みにもなれば」と始めた取り組み。同ギャラリーの関係者は「気軽に足を運んで気に入った作品とアーティストを応援してほしい」と話している。
会期は9月15日(火)までで、展示時間は正午から午後4時。水曜休廊。詳細は道工房【電話】0467・23・8772へ。
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