被災地へ視察に行った中川温泉旅館組合の組合長 井上俊之さん 山北町中川在住 49歳
新たな温泉郷の魅力を
○…巨大地震に襲われた時、宿泊業者の対応はどうあるべきか、どういう貢献が地域にできるのか。「実際に現地に行って生の声が聞きたい」と企画し、先月、宮城県石巻市、南三陸町などに組合員らで視察研修に出向いた。「ホテルの女将に話しをうかがいました。お客様の避難誘導、ライフライン復旧までの取り組みなど大変勉強になりました」。『日頃の防災訓練が役に立った』、の言葉が印象的だったと話す。「多くの困難に立ち向かう中で、水の確保が毎日の試練だったことも知りました」。女将のホテルでは入浴サービスや洗濯物の取り次ぎ、子供たちへの学習の場の提供など、周辺地域への協力も自発的に行っていったという。「当組合でも出来ることから準備を進めていきたい。水の確保は喫緊の課題です。町とも今後、協力関係について話し合っていければ…」と率直な思いを語る。
○…組合長に就任して1年目。「丹沢湖周辺の観光客も減少傾向になり、かつて14社が加盟していた組合も今は7社になりました。東京から近く、渓流があり西丹沢の自然溢れる温泉郷。箱根とは違ったこの地ならではの魅力を発信していきたい」と意欲をみせる。今回の視察もそうだが、地元の地域団体統合への働きかけなど、着実で安定感のある氏の手腕に期待がかかる。「地域力をあげたい」と、初夏の風物詩”ホタル”の育成にも自らの旅館で力を入れる。今年は前組合長の助言を受け、組合で足柄の特産品を使った「逸品料理」も完成させる予定だ。
○…明治43年から続いている老舗旅館、信玄館の4代目社長。初代は三保村の村長も務めた。敷地内のこんこんと湧き出る自噴源泉には、かつて水神が祀られ、鳥居もあったという。三保育ち、故郷への愛情はひとしおだ。「地域に伝わる伝統を復活させた門入道やミツマタもあります」と表情が和む。時代に則した温泉郷の新たな切り口を模索し、組合活動に力を注ぐ。