松田町大名行列保存会の会長を務める 渡辺 興治郎さん 松田町松田惣領在住 73歳
成長産業から地域文化へ
○…松田町の無形文化財「松田大名行列」を伝承する保存会の会長。2年前に前会長から引き継いだ。お披露目の場となる観光まつりに向け、演者の稽古や道具の手配など、下準備に奔走する。「赤坂奴(やっこ)の演技指導は師匠(OB)たちが担当し、衣装の着付けも専門家がいる。どちらもできない私は企画や財務、渉外など組織づくりの面で伝統芸能を守るお手伝いをしていきたい」
〇…東京都日本橋の生まれ。終戦の前年、3歳の時に祖父母の住む大磯へ家族で疎開した。東京大空襲で実家が焼失したため、そのまま大磯で育つ。大学では工学部へ入学し、在学中は車好きが高じて自動車サークルに入部。車いじりに没頭し、軽音楽部も兼部してハワイアンに熱中。今でもドライブの定番になっている。卒業後は大手自動車販売会社へ入社し技術、販売、宣伝、人事、販売店の所長や工場長など定年までに13部署に勤め、日本の自動車産業興隆の一翼を担った。
〇…29歳で結婚、平塚に19年住み、48歳で奥さんの実家のある松田町に居を構えた。「交通の便がよく、気候も安定している。住みよい町だとすぐ実感した」。越してきてから知った松田大名行列は長らく見る側だったが、自治会長などを務めてから関わりが増え、ついに保存活動の先頭に立つこととなった。目下の悩みは後継者不足。「小中学生には運動会の演目や総合学習で伝承する機会があるが、大人の担い手が…」。回覧板やハガキで体験会への参加を呼びかけるが反応は良くないとか。「間口を広げたい。伝承すべき部分を守りながら、それとは別に誰でも気楽に参加できるようなこともしたい。『奴音頭』なんてどうかな」。伝承と観光の両立に試行錯誤は続く。
〇…大学生から始めた海釣りが趣味。今もたまに仲間と出かける。昔は奥さんが付きあってくれたことも。「最近は多忙でなかなかできない。酒匂川で見かける鮎釣りもやってみたい」