〈連載〉さすらいヨコハマ⑧ 桜の花の下には 大衆文化評論家 指田 文夫
今年は春が遅いと感じていたが、3月下旬は気温が20度を超える日が続き、桜も一気に満開になり、あっという間に散っていった。
みなとみらいの大岡川河口の桜並木も大いに美しかったが、南部では、金沢区の鳥見塚の桜が大変に見事である。海岸に向かい、ゆるやかに湾曲して下る桜並木は、多くの市民が訪れる名所になっている。
現在は富岡総合公園と県警機動隊などになっている一帯は、戦前は横浜海軍航空隊だった。1945年6月には米軍の空襲があり、富岡駅は破壊され、多くの死者が出た。戦後は米軍に接収されて倉庫になり、鳥見塚には、米軍専用の停車場があった。1947年には富岡駅が現在の位置に戻されたので、1970年代には市民レベルで鳥見塚駅復活の運動が行われたこともある。
この横浜海軍航空隊跡の半ば廃墟だったレンガ造り倉庫は、1967年の松竹映画、安藤昇主演の『白昼の惨殺』で使われている。また、戦前、根岸湾にあった大日本航空についても、1942年の東宝の阿部豊監督の『南海の花束』で湾内に着水する飛行機の映像を見ることができる。どちらも、静謐な根岸湾を利用した飛行艇の基地だった。
(文中敬称略)
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