原宿在住の駒澤昌子さんが文章、下倉田町在住の末岡恵実さんが絵を担当した絵本「あかいくつ」(銀の鈴社)が先ごろ出版された。同作は、童謡「赤い靴」にちなんだ山下公園にある銅像が物語の鍵を握るファンタジー。観光案内の一面も持つ親しみやすい一冊に仕上がっている。
社会人になったばかりの主人公ハルカと、幼なじみでいまは大学院に通う裕太が、12月のある寒い日に横浜で過ごす一日を描いた同作。山下公園にある「赤い靴はいてた女の子像」の前で巻き起こる不思議な体験を通して、ハルカが小学校5年生の時に亡くなった母からクリスマスにプレゼントされた“赤い靴”に込められた思いを知る、切なくも温かい物語だ。
作品づくりのきっかけは6年前、駒澤さんが家事の傍ら通っていた文章や創作を学ぶ通信制大学で、横浜を題材にした卒業制作を書いていた時のこと。市内のことを調べていくうちに、「赤い靴はいてた女の子像」に秘められた悲しい物語を知る。銅像のモチーフとなった童謡「赤い靴」で、主人公の少女が「異人に連れられて行ったのではなく、じつは結核に冒され日本の療養所で亡くなった」という逸話があることに衝撃を受け、「いつかこの子が鍵となり、救われる物語を編み出したい」という気持ちが強くなっていったという。
転機が訪れたのは卒業後。同じ区内在住で、手づくり絵本の会を主宰する末岡さんと出会い、「繊細で優しいタッチのイラストに引き込まれ、今まであたため続けていた作品を一緒に」と、共同制作を打診した。これを受け、末岡さんも駒澤さんの「一つひとつの言葉を大切にする姿勢」に魅了され、今年に入り二人三脚の制作が始まった。
互いに市外出身だが、よく買い物などで足を運んでいた横浜に親しみを持っていたことから、作品中には、銅像のほかにも「赤レンガ倉庫」をはじめ「中華街」や「野毛山動物園」「ベイブリッジ」などといった市内の名所を多数登場させた。冒頭にはみなとみらい周辺の手書きマップも掲載され、観光案内の一面も持つような仕組みとなっている。「読んだ人の心が温まると同時に、横浜の持つ魅力を再発見してほしい」と話す。
細部までこだわり抜く
限られた期間のなかでふたりが大切にしたのは、細部までこだわり抜くことだ。文章ではクライマックスの展開を試行錯誤。「ハートフルな仕上がりを想定し、とにかく丁寧にストーリーを組み立てた」とポイントを話す。イラスト面では「主人公のお父さんが肩車をしている姿を描く際、足のバランスを上手く表現するのが難しく、特に骨を折った」と苦労したことも。
文章、絵ともに急きょ流れの変更があった際も、それに合わせてキャラクターやまちの雰囲気をどう変えていくかとことん話し合った上で作り上げていったという。今回の制作においてふたりは「(一緒につくることで)互いに自分にはない発想がたくさんあり、刺激になった。今後の創作活動の糧にしたい」と口を揃えた。
同作は32ページ。有隣堂戸塚モディ店、同東急プラザ戸塚店をはじめ、全国の書店で取り扱い中。
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