病原菌を自滅させる全く新しい特徴を持つナノポリマーを開発し、日・米での特許取得や神奈川県からの認定も受けたベンチャー企業が、戸塚町にあるのをご存じだろうか。「(株)ナノカム」の設立者で、薬学博士でもある城武昇一さん(72)に話を聞いた。
開発したのは、菌を自滅させる特殊なナノサイズの化合物。同社ではこれを利用した世界初の「抗ウイルス剤」として「AUSIRO(オウシロ)」シリーズを扱っており、主にスプレー剤として販売している。そのほか、化粧品や日用品などの原液としても利用されている。
開発したナノ粒子を病原菌などの細胞壁部分に付着させると、その部分だけ壁の合成が止まる。すると菌が破裂して自己融解させる仕組み。菌を殺す毒ではないため、人だけではなく動植物などにも活用でき、環境にも悪影響が少ないという。
城武さんは「ナノ粒子は人体に入っても自然分解するため体内に残らない。アレルギー体質の人でも副作用はない」と説明する。一回のスプレーで約40億個のナノ粒子が菌に作用し、手すりなどの噴射箇所には1週間以上、手のひらなど人体には最長6時間以上効果維持されるという。
「菌と共存する社会へ」
「菌をやっつけるのではなく、菌と共存するやり方こそが今後地球環境を守るうえで非常に重要になる」。約40年前、当時千葉大学に在籍し、がんや細菌を扱う医療薬学を専門にしていた城武さんはこう考えた。一方で当時の技術力での実現は難しかったと振り返る。それでも「薬剤耐性ができる菌を打ち負かすやり方を続けていたら、いつか世界中に悪い菌が蔓延する」と危機感を持ち研究を続けてきたという。
転機となるのは2000年代初頭のことだ。微細な構造を作る技術「ナノテクノロジー」の出現で開発が可能になったという。その後、城武さんは2008年に横浜市立大学大学院の教授として着任。医学部で薬物療法学などを教えながら抗菌・防菌の研究を継続、そして11年に独自のナノ粒子の開発に成功する。
これに注目した国や県などからの要請もあり、本格的に商品開発をするため城武さんは現職のまま大学内にベンチャー企業を設立。当時課題だった人体への影響面についても補助金などを活用しながら実験を重ね、3年ほどかけて実証。そして15年、ついに世界初の抗菌・抗ウイルススプレーとして販売を開始した。
コロナにも効果期待
新型コロナウイルスには実証ができていないとしながらも「ウイルス全般に利用でき、新型コロナにも効果が期待できる」と城武さん。同商品を神奈川県「ME─BYO BRAND」に認定した県担当者も「確約はできない」としながらも「一般的な感染症予防には期待できる」。城武さんは「共存しながら地球環境を守り、自分の身を守る。その役に立つことができれば喜びです」。
同商品は無香料のものなど全5種類。一部医療機関で取り扱うほか、インターネットで販売中。詳細は同社【電話】045・871・6678。
|
<PR>
戸塚区・泉区版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|
|
<PR>