かつて劇団四季に所属し女優業を務めた鈴木智絵さん(48・区内在住)が、介護の道で活躍中だ。勤務先の介護付き有料老人ホーム「戸塚共立ゆかりの里」(戸塚町)では、介護はもちろん、特技の踊りや歌を生かしたショーで、入居者を楽しませている。
施設の広間をステージに、歌って踊る鈴木さん。その笑顔に誘われるように入居者も体を動かす。毎週水曜日のワンマンショーは入居者の楽しみのひとつだ。「喜んでくださることがやりがい」と満面の笑顔で話す。
厳しい世界で経験積む
5歳からクラシックバレエを習ってきた鈴木さんは、バレエ講師の勧めで劇団四季のオーディションを受けた。即戦力を求める劇団に採用され、19歳でエンターテインメントの世界に踏み出した。
「楽しく踊れて、なんて素敵な世界だ」と感じながら初舞台を経験した鈴木さん。だが間もなく厳しさを痛感することになる。役をキャスティングしてもらうが、期待される水準の演技ができず、何度も交代させられた。発声や発音を何より大切にする劇団の中で、発声のコツをつかめず苦労しながらも、演技を磨いていったという。今年7月に亡くなった創設者の浅利慶太さんについては「厳しいけれど優しい一面も。とてもかわいがってもらいました」と懐かしむ。
笑顔がやる気に
7年いた劇団を退団したあとは、女優業を中心に映画やドラマに出演。一見華やかな経歴だが、本人は「声をかけてもらうまま仕事をしていた。どこか、とてもぼんやりとしていた」という。そんな鈴木さんに昨年3月、転機が訪れる。かねてから彼女のダンスが好きだったという友人と会った時のことだ。「なぜ真剣にダンスを続けないのかと、とても怒ってくれたんです」。鈴木さんに対する、愛情から来る怒りだった。
「私のダンスを求めてくれる人がいる」と感じた鈴木さん。一念発起し、痛めていた股関節の手術を受けて、リハビリを兼ねたライブイベントを企画。歌とダンスによるステージを自ら演出し、友人らを楽しませた。その経験から「人に何かを与えたい」という考えに移ったという。両親が年齢を重ねてきた折、関心のあった介護に注目した。すぐに介護の資格を取り、面接を受け、今年2月から同施設で勤め始めた。
「お風呂の介助をしながら歌ったりしている。笑顔になっていただくのが嬉しい」と話す。7月には施設の祭りで盆踊りの振り付けを考え、入居者と一緒に踊るなど特技を生かした介護を行っている。入居者の笑顔が、さらにやる気を引き出させるという。「人生が様変わりした。あらゆることに誠実に向き合うようになった。これからもっと勉強し、エンターテインメントの要素を生かしたスーパー介護士さんになるのが夢」と前を向く。
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