型に縛られない自在な発想と豊かな表現力から俳句界では「異色の俳人」として知られる和田に暮らす貞方義昭さん(78)が、20年間に渡り作りためてきた約5万作の句の中から、厳選した230句を集録した初の句集「悠久」がこのほど、(株)文學の森から出版された。
「字を書くのは見積書と請求書くらいだった」。25歳の時に建設会社を起業して以来、金属加工業や飲食業などを手掛けてきた経営者が、俳句の世界に飛び込んだのは妻と出かけた長野への旅行がきっかけだ。
車を運転中、一面に広がるそば畑の情景を目の当たりにし、一句口ずさんだ。「暑き夜は 床に敷きたや 蕎麦の花」。文学に精通する妻は後に「異色の俳人」と呼ばれることになる夫の処女作に感銘を受け、「センスがあるんじゃない」と答えたという。
以来、建設作業の現場で出る木片に句を書き記す生活が始まった。100句ほどを書きためた頃、地域情報紙で紹介されていた句会へ赴き、5つの句を披露。独学で作句し「歳時記も持たず素人同然だった」というが、型に縛られない作風は高い評価を得た。
人が使わない言葉で
20年に渡り生み出してきた句は約5万作。その全てがノートに1句ずつ丁寧に記録されている。書棚に整然と並ぶノートは50冊を超え、今回の句集発刊にあたり1年の歳月をかけ、この中から230句を選び出した。
人が使わない言葉で句を作ることにこだわりをもっている。「小さな頃からみんながやっていないことをやりたがる子どもだった」という。「自分の目で見て、肌で感じなければ言葉が生きない」。使いたい言葉がみつかると、その言葉を知ろうと、作句のために旅に出かけることもしばしばあった。
作品の中にキリスト教関連の言葉が出てくるのも貞方さんの作風の特徴。自身はキリスト教徒ではないが、父親が隠れキリシタンだったという。「今回、句集をまとめるにあたり、改めて私の句作りのルーツは父にあるのかもしれないと感じている」と話す。
今後も自由奔放に
今月25日で78歳となった。膀胱がんを患い手術も受けたが、「これからも自由奔放に作り続けたいですね」。そう話すと妻は「人生が型破りですから」と続けた。句集「悠久」に関する問合せは(株)文學の森【電話】03・5292・9188へ。
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