鎌倉のとっておき〈第14回〉 滑川の七変化
市内を流れる滑川は、朝比奈峠付近を水源地として5・6キロ流れ、由比ヶ浜にそそいでいる。さほど長くはないこの川だが、場所によって呼び名が七変化するのをご存じだろうか。
上流から太刀洗川に始まり、胡桃川、滑川、坐禅川、夷堂川、炭(墨)売川、閻魔川と名を変え、河口につながっている。
その名の由来を知って、川沿いを散策しながら鎌倉の歴史を検証したり、流域に広がる中世の残像に触れてみてはどうだろう。
例えば、「太刀洗川」は鎌倉五名水の一つ梶原太刀洗水に由来する。滑川源流の湧水で、幕府の有力御家人の上総介広常を、頼朝の命を受けた梶原景時が殺害し、その太刀を洗った伝説がある場所。頼朝の御家人切りの第一幕が想像できる。
「坐禅川」は、伊豆に配流中の頼朝に平氏討伐の挙兵を勧めた文覚上人に因んだ名前と伝えられている。大御堂橋の西側には文覚上人の屋敷跡があり、川はその橋の下を流れているのだ。
「閻魔川」は、閻魔橋の近くに運慶作と伝わる閻魔が安置された閻魔堂があったため。ただ、その閻魔堂は江戸時代に今の山ノ内にある円応寺に移され、名前だけが残ったとされている。
このように、鎌倉の事物についた名前の由来を調べると実に面白い発見がある。かくいう私も長年この川沿いを通りながら、こうしたことを知ったのは最近のこと。鎌倉検定のお陰と言える。
渡辺弘
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