鎌倉のとっておき 〈第92回〉 国登録文化財が五輪選手の拠点に
奈良時代創建といわれる真言宗の古刹、腰越の宝善院の境内地内で、駐車場横に建つ和洋折衷住宅が今年3月、国登録有形文化財に答申された。
この建物は1936年に建築され、41年に増築された「旧太田家住宅主家」で、木造平屋建て(一部2階建て)の寄棟造瓦葺。
訪問したところ、中には入れなかったが、ご住職の親切なガイドで、外側から建物をじっくり見学ができた。
灰色と赤色の見事なコントラストの屋根が特徴的な和風建築ではあるが、玄関ポーチや建物からせり出した形のサンルームが洋風な趣を醸しだし、そこを通して建物内の洋間空間が広がっている。洋間には、幾つかのトレーニング機器が垣間見えた。
なんとこの建物は、豪州のオリンピックセーリングチームの本部拠点となるとのことで、昨年のプレ大会で既に使用され、建物横には豪州の選手の名前のタグが付いたフィン級のセーリングボートが置かれていた。
かつて、お寺の近くは福沢諭吉や原敬(彼が暗殺された後は、同じく首相になった田中義一が借り受けた)の別荘があった高級別荘地であったという。
こうした、昔から著名人に愛されたこの腰越の土地に、平和の象徴、五輪選手たちが、来年夏、やって来る。コロナ禍が去り、選手達や関係者、大勢の観客、観光客を笑顔で迎えられることを願ってやまない。
横山雅樹
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