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鎌倉のとっておき 〈第98回〉 日本の製紙産業への功績跡

掲載号:2020年10月23日号

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石灯籠の真ん中のドーナツ型の石がグラインダーストーンで内径の歯車が特徴。元々この石が3段・4段と積まれていましたが、事故防止の為、平置きで保存されています
石灯籠の真ん中のドーナツ型の石がグラインダーストーンで内径の歯車が特徴。元々この石が3段・4段と積まれていましたが、事故防止の為、平置きで保存されています

 鎌倉には、明治から昭和初期にかけ多くの洋館が建てられ、いわゆる別荘文化が花開きました。その1つ、江ノ電由比ヶ浜駅から海岸へ向かう住宅街にある「かいひん荘鎌倉」も長年地元住民に親しまれてきました。

 関東大震災の翌年、1924(大正13)年に造られた建物は、急こう配の切妻屋根と出窓(ベイ・ウィンドー)が特徴で、国登録有形文化財・鎌倉景観重要建築物第7号に指定されています。現在は割烹旅館として営業中ですが、当時は富士製紙(後に王子製紙と合併)社長の村田一郎が別邸として所有していました。

 村田は1857(安政4)年に鹿児島で生まれ、叔父が興した三田區製紙所の副社長として製紙業界にデビュー。日本のエネルギー源として水力に着目した村田は、豊富な水資源がある静岡県富士に1887(明治20)年、製紙会社を設立。後に渋沢栄一の王子製紙と業界を二分する事になる富士製紙の誕生です。その後二代目社長に就任し、製紙業界で名を成す存在になります。村田自ら米国から輸入した砕木機(グラインダー)での低コストの製紙法は日本初の試みで、業界に大きな功績を残しました。

 晩年を鎌倉で過ごした村田は、その砕木機の部品(グラインダーストーン)を材料として石灯籠を立てました。今でもこの功績が旅館の庭園に残っています。

       井上靖章
 

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