逗子海岸流鏑馬の射手を務める 鈴木 達朗さん 逗子市在住 39歳
伝統文化の誇りを胸に
○…鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』の記述にちなんだ「逗子海岸流鏑馬」(逗子市商工会主催)が、11月16日(日)午後1時から行われる。23回目を迎え、昨年は約1万1千人が訪れたこの大舞台に、武田流の射手の一人として臨む。出場は5回目。過去には最多的中をとったこともある手練れの一人だ。「昨年は思うような結果が出せなかったが、知り合いもたくさん見に来るので、今年は良い所を見せたい」と意気込む。
○…鎌倉で生まれ、幼少の頃から鶴岡八幡宮で行われる流鏑馬を目にして育った。子ども心に勇ましく疾走する流鏑馬に胸を高鳴らせた記憶からかもしれない。社会人になってから西洋馬術を始め一通りの技術を修めた後、父が先代武田流の師範と親交があったのが縁で門を叩いた。「これがとんでもなく厳しい世界で」と苦笑い。鎌倉時代から続く伝統ある神事だけに上下関係も厳しく、流鏑馬に臨む心構えを徹底的に叩き込まれた。ただそうした経験もあって「伝統的神事をやらせて頂いている、日本人としての誇りに気付かせてもらった」。射手らしい精悍な顔つきで語る。
○…勤め先は明治時代から続く若宮大路沿いの老舗宿。立地柄外国からの宿泊客も多く、神事がある際には「ぜひ流鏑馬を見に行って」とPRも欠かさない。馬場を走る射手が実はフロントのホテルマンだと知ると誰もが驚くが「いいものが見られた」と満足げに宿を発っていく姿を見ると、やりがいもひとしおだ。
○…妻と長男、長女の4人家族。仕事柄、勤務時間が不規則で休みもほとんどない多忙な日々を送るが、合間をぬって週に1度は馬の世話と稽古に励む。「家族には迷惑をかけているが応援してくれる。ありがたい」。流鏑馬では、矢が的中するとひときわ大きな歓声がわく。「お客様の声は、射手にとってなにより励みになる。今年も射手の腕比べを一緒に楽しんでほしい」と呼びかけた。