自宅を開放し、仕事や病気などのため、子育てに専念できない保護者に代わって保育を担う「家庭的保育事業」を行っていた「矢後保育室」=永田北=が3月に閉室し、親子2代にわたって続けてきた約60年間の家庭保育に幕を下ろした。5月24日から、保育室の子どもの様子を収めた写真展を開き、その歴史を紹介する。
同事業は1960年に始まった「認定家庭保育福祉制度」が起源。事情により、日中、子育てに専念できない保護者に代わり、市の認可を受けた資格者が自宅で0歳児から2歳児までを預る。定員は3人から5人。現在、市内に30カ所あり、南区には今春まで同保育室を含めて3施設あった。
同保育室は、矢後壽惠さんの母親が制度発足時に始めた。1992年、母に代わって、塾の講師をしていた壽惠さんが引き継ぐことになった。
自宅の1階部分を保育室として使用。保育園が増える中で、制度自体がなくなりそうな時もあった。しかし、保護者たちが少人数らしいきめ細やかな対応や異年齢の子どもが集まるなど、「家庭的な保育」の良さを訴え、徐々に助成金が増えたこともあり、制度が充実。27年間運営を続け、今年3月、65歳の定年を前に閉室した。
母親から引き継いだ91年以降、約80人の子どもを預かった。中には、壽惠さんが親子2代にわたって対応した人もいるという。「27年間はあっという間だった」と振り返る。自分の病気で休んだことはなく、「とにかく安全を最優先し、良い保育ができるよう努めてきた」という。「継続は力なりで、細々とでもいいからずっと続けることが大事」と話す。
4月から矢後さんの自宅をそのまま引き継ぐ形で「もりた保育室」が開所。矢後保育室に子どもを預けていた親が引き継いだ。今後、壽惠さんは定年のない補助員として関わっていく予定。自分の時間ができることから、趣味のマラソンに力を入れたいという。
24日から写真展
矢後保育室の思い出を多くの人に知ってもらおうと、2005年から閉室までの子どもの様子などを撮影した写真展を24日から28日まで、上大岡の「ひまわりの郷」で行う。写真が趣味の夫・保次さんが撮った約50点を展示する予定。問い合わせは保次さん【電話】080・3172・6025。
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