新型コロナウイルスの感染拡大で、紙芝居を披露する場がなくなっている。蒔田町在住の片岡直子さんが座長を務める団体は、毎年、蒔田小学校の授業の中で児童に紙芝居を見せていたが、今年度は授業のめどが立っていない。公共施設や高齢者施設での発表もなくなる中、片岡さんは「生で紙芝居を見てもらい、子どもに想像力を養ってほしい」と願っている。
授業、15年間続ける
片岡さんは中学校の教員として社会科を教えていた。退職後、紙芝居や手作り絵本の制作を本格的に開始。20年以上、横浜の歴史や自身の出来事などを作品にしており、これまでに数十作品を手掛けた。紙芝居の普及を図ろうと、2003年に公演団体「かみしばい・いっぽ」を立ち上げ、座長を務める。片岡さんとともに紙芝居の普及活動を行う宮崎奈津子さんの2人で小学校や高齢者施設、公共施設などで紙芝居を披露している。
中でも大切にしていたのは、蒔田小学校での授業。自身や子どもが通っていたこともあり、15年前から1〜6年生にそれぞれ1時間ずつ、紙芝居の時間を設けてもらい、横浜の歴史などの作品を伝えてきた。同校では別のグループも同じように作品を披露しており、年間2時間は紙芝居に触れていた。片岡さんは「見ている子どもの目が輝いていたり、終わった後に私のところへ寄って来て、紙芝居の仕組みについて聞く児童もいた」という。紙芝居を知ったことによって、夏休みに自作に取り組む子どももいた。今年も2月まで授業を行っていた。片岡さんによると、市内の小学校で継続的に紙芝居の授業があるのは同校だけだという。
コロナ禍で学校は6月から再開したばかりで、授業時間の確保が課題になる中、今年度、紙芝居の時間が設けられるかは分からないという。また、片岡さんは「集まった児童に向かって大きな声を出すという従来の紙芝居の見せ方は難しいと思う」と語る。
市が動画公開
市は学校休校中の4月、紙芝居団体に依頼し、横浜に伝わる昔話や民話などの作品を演じてもらい、動画をサイトで公開する取り組みを始めた。片岡さんの団体からは、日本最初の石けん製造所を現在の南区万世町に作った堤磯右衛門を紹介する「いそえもんのせっけんづくり」や吉田新田の干拓を進めた吉田勘兵衛の物語「この海を田に-吉田新田の話」など、7作品を収録した。
片岡さんは、教員が児童の自宅学習のために試行錯誤しながらプリント作りや動画撮影をしているのを聞き、「吉田新田の紙芝居を見てもらえれば、その負担も軽減されるのでは」と考え、吉田新田の話の公開を決めた。通常、干拓にまつわる歴史は4年生が学習する。南区の学校では、現地を歩いて学習することもあるが、現在の状況では校外学習が難しい面もあり、それも考慮した。
「生で見てほしい」
子どもに対する紙芝居について「歴史を学ぶ入口として有用なもの」という。それをきっかけに自分から分からないことを調べ進めることにつながってほしいと期待する。外出自粛を受けて、人気アイドルグループのメンバーが動画で紙芝居を披露し、注目を集めている。これには「本当は子どもの顔や反応を見ながら、セリフを足したり、質問に答えながら進めるのが楽しい」と画面上の動画では伝えられないものがあるという。
片岡さんは、紙芝居の普及を図る紙芝居文化推進協議会のメンバー。ほかの紙芝居団体も学校や施設で披露できるめどが立たない中、今は作品を増やすことに注力している。「いずれ生で見てもらえる機会が来るまで、まずは動画を見てもらえたら」としている。
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