弘明寺観音と弘明寺商店街が8月20日、災害発生時の協力体制づくりを目的にした消防相互応援協定を締結した。弘明寺観音には国の重要文化財があり、寺や付近で火災があった際には、商店街が消火活動に協力。商店街が被害を受けた場合は、弘明寺観音の駐車場や敷地の一部を避難場所として提供する。重要文化財がある施設と地域が協定を結ぶのは県内では初めてで、関係者は両者や周辺の防災意識が高まることを期待する。
協定は南消防署が両者に提案して実現したもの。昨年、パリのノートルダム大聖堂や沖縄・首里城跡が火災に見舞われたことを踏まえ、消防署は文化財のある施設や地域の災害発生時の消防応援協力体制づくりを進めている。
弘明寺観音には、平安時代中期に作られた国指定重要文化財の「木造十一面観音立像」のほか4点の絵画や彫刻、工芸品といった市指定文化財が保管されている。こうした文化財を火災から守ろうと、毎年1月26日の「文化財防火デー」前後に弘明寺観音と商店街、消防署、消防団が連携し、本堂からの火災を想定して、建物の消火や文化財を運び出す訓練を行っている。消防署はこれまで築いてきた両者の連携をさらに強めようと、消防相互応援協定の締結を提案した。
敷地を避難場所に
20日に弘明寺観音で行われた協定締結式には、美松寛昭住職と商店街の長谷川史浩理事長、南消防署の小出健署長、南消防団の有賀和彦団長が参加。協定書にサインをした後、商店街から弘明寺観音に10m四方のブルーシート2枚が寄贈された。協定では商店街側は、弘明寺観音で火災が発生した場合に消火活動や文化財をブルーシートで覆うなどの保護活動を行うのと同時に、寺関係者の避難誘導や救護を実施する。弘明寺観音側は、商店街が地震などで被災した際、敷地の一部や駐車場を一時避難場所として開放する。
防災意識向上へ
美松住職は「十一面観音立像はこれまで火災に遭うことがなかった。この貴重な仏様を守っていかねばならない使命があるが、それは私たちだけではできない。商店街、消防団、地域の方の力を借りて、未来永劫、貴重な文化財を守りたい」と語った。長谷川理事長は「弘明寺観音はこの地域の人の心のよりどころ。大切な文化財を守り続けたい」とした。消防署の小出署長は「全国的にも画期的な協定で、弘明寺観音で働く方や近隣住民の防災意識向上につなげたい」と期待した。
商店街には「自衛消防隊」が組織されているほか、店主の中には消防団員もいる。消防団の有賀団長は「これを機に地域に防災の意識が広がれば」と話し、協定によって地域を守る目が増えてほしいとした。
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