横浜市内で夏以降の自殺者が前年から2割以上増えるなど、増加傾向にある。自殺予防のために必要なことを精神科医で星槎大学大学院=事務局・青葉区=の内田千代子教授に聞いた。
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内田教授は、自殺した人の約9割は亡くなる前に何らかの精神疾患を抱えていると指摘。病院の診断を受けていないケースも多く「本人は精神疾患にかかっているため、視野が狭くなり、『自殺以外に解決策がない』と判断してしまう。そもそも『どうしたら死ねるか』と考えること自体が、うつ病の症状の一つ」と話す。
このため、相談を受けた人や変化に気付いた周囲が適切な支援機関などにつなぐことが重要だという。一方、相談を受けたら「一人で抱え込まず、支援機関や医療機関等の専門家につなぐことが鍵」と語る。
変化あれば専門家へ
自殺防止で大きな役割を担うのが、「ゲートキーパー」。自殺の危険がある人が発するサインに気付き、声を掛けて話を聞き、必要な支援先につなぎ、見守ることができる人だ。「命の門番」として、誰もが意識して人と接することで自殺対策につながるとされる。内田教授によると、自殺につながるうつ病のサインは「何も興味が湧かない、好きなこともしない」など。また不眠、過眠、倦怠感、疲れやすいなど、身体の不調が出ることが多いという。
手段へのアクセス断つ
誰かに話を聞いてもらうだけでも楽になるというが、医療機関の受診も重要。自殺の危険性がある時は医師の判断で入院となる場合があるが「自殺予防で効果が最もあるのは自殺手段へのアクセスを断つこと。とても危ない時は保護が必要。その上で治療し、回復を目指していく」と語る。
また「家族でも悩みを言えない人も多いが、実際は助けを求めている。特に男性は弱みを見せられない傾向がある。男女ともに元気がない、大切にしていたものを放り出すなど、変化が見られることが多いので家族や周囲が気付くことができれば」と話す。
芸能人の自殺に関する報道が相次いだことで「連鎖する危険がある」として、周囲が注意してみてほしいという。
生活リズム崩さず
現在は新型コロナウイルスの影響が診療の場でも見られ「経済的不安からの自己肯定感の低下、自粛が長引いたことによる生活リズムの乱れ、親子関係の悪化などの相談がある」と内田教授。
これまでと同じ生活ができない今は「睡眠、食生活、運動などの生活リズムを崩さない心掛けが必要」と説明。人との接触は制限されがちだが「『幸せホルモン』として知られるオキシトシンは見つめ合ったり、電話の声だけでも分泌されて気持ちが落ち着くという研究もある。直接会えなくても人とつながっている感覚が大切」と話す。
また「長寿の人の特徴の一つとして、感謝される経験が多くあると言われている。こうした状況の時こそ身近な家族などに感謝の気持ちを示してもらいたい」と語った。
悩みのある人の相談はこころの電話相談(横浜市こころの健康相談センター)【電話】045・662・3522(平日午後5時から午後9時30分、休日午前8時45分から午後9時30分)、県の「いのちのほっとライン@かながわ」はLINEで相談も可能。匿名可。
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