2011年の東日本大震災の発生から10年。津波被害や原発事故など、多くの人が経験したことのない被害を受けて、市民の災害に対する意識が高まった。この10年、南区役所や区民の取り組みを振り返ると、さまざまな災害の被害をいかに最小限にするかという「減災」に重点を置いてきたことが分かる。
東日本大震災で南区は震度5弱を観測。市によると区内で4人が負傷、26件の建物が損壊した。
当時、蒔田駅そばの花之木町にあった南区総合庁舎も大きな揺れで柱にひびが入るなどし、職員と来庁者が一時、建物の外に避難した。耐震性に問題があるとして、すでに浦舟町への移転が決まっていた中での大地震。災害時は対策本部が置かれる区庁舎で起きた事態に当時の区職員は「外へ出たことに加え、通信もつながりづらく、状況把握に時間がかかった」と語っていた。16年2月に移転した新庁舎は「災害に強く安全・安心な総合庁舎」を目指し、横浜の区庁舎では初の免震構造が採用された。
被害が多様化
東日本大震災後、県や市などから大地震の際の津波被害地域の予測が出された。また、ゲリラ豪雨や台風による浸水やがけ崩れといった災害も発生。区は多様化する災害に対応するため、災害によって自宅で暮らすことができなくなった人が生活する小中学校の「地域防災拠点」や大雨時の危険ながけ地、津波による浸水予測など、さまざまな情報をまとめた「南区防災マップ」を19年に作り、全戸に配布した。
南区は木造密集地域が多い。震災時の住宅火災の被害拡大が懸念されるため、南消防署は13年から該当地域の自治会町内会に「減災取組宣言」をしてもらい、自助・共助の意識をより強くしてもらおうとしている。
南区にある25カ所の地域防災拠点では震災前から年1回の訓練が行われていた。中村小、石川小、平楽中の3カ所が拠点になっている中村地区は、それまで異なる日に実施していた訓練を14年から同一日にしている。
しかし、昨年9月の訓練はコロナ禍で規模を大幅に縮小した。同地区の町内会長の男性は「行事もなくなり、地域のつながりが希薄になっている。震災時の『共助』に影響しないか心配だ」と話し、防災活動を再考したいとした。
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