吉野町5丁目の活字鋳造所、株式会社築地活字が伝統技術を後世に残そうと、7月30日からクラウドファンディング(CF)を始めた。同社は新型コロナウイルスの影響で昨年から売り上げが激減。CFで資金を募り、会社を存続させ、活版印刷文化を守り抜く。
独特の風合い
はんこのように文字や記号を彫り込んだ活字。活版印刷は、金属活字と呼ばれる字型を1個ずつ組み合わせて1枚の版にし、それにインクをなじませて印刷するアナログ手法のこと。主に名刺や財布などに活用される。
多種多様なデザインなどが人気で、デジタル印刷が台頭する今も、繊細な陰影と独特な風合いが人々の心をつかむ。
二重苦で存続危機
しかし、現在、印刷に使用する字型を鋳造できる職人は全国で4人〜5人と深刻な後継者不足に悩まされているという。高齢化も進み、築地活字の職人は大松初行さん(76)の1人だけだ。
さらに、コロナ禍で対面での商談が減少し、名刺交換の機会がなくなったことで既存客からの案件も激減。売り上げはコロナ禍以前の半分以下となった。同社の平工希一社長=人物風土記で紹介=は「イベントが中止となり、作家やデザイナーの方からの名刺発注が減った」と頭を抱え、収入の柱を失ったという。会社は存続の危機に直面している。
寄付で立て直し
同社は1919年創業。102年の歴史、活版印刷と伝統技術を継承しようと、日本の伝統工芸などを映像で紹介する動画メディア「ニッポン手仕事図鑑」の協力の下、7月30日からCFに取り組んでいる。返礼品には、同社で活版印刷のノウハウを学べる体験会などを提供する。
SNSでの広域的な周知が実り、開始後2日〜3日で約100人が支援し、目標金額の50万円が集まった。だが、会社の立て直しに必要な金額には達しておらず、引き続き寄付を募っている。
技術応用を発信
市内2社とともに「字心活版・活字プロジェクト」に取り組む。プロジェクトでは活版印刷を体験できるワークショップを開催。活版技術を用いた商品開発にも注力し、ショップカードなどのデザインを手掛ける。
平工社長は「皆さんのご厚意に感謝の気持ちでいっぱい。活版印刷には人の温かさが詰まっていて、それらはコンピュータなどの機械では表せないもの。古き良き伝統に新しい要素を加えながら次代につないでいきたい」と話している。
返礼品の紹介など詳細は左記の二次元コードから。9月30日まで。寄付は1千円から受け付け。
![]() CFの詳細ページにアクセスできる二次元コード
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