インターネットの掲示板などに事実無根の出来事を書き込まれ、20年以上も誹謗中傷を受けた経験を持つタレント・スマイリーキクチさん(50)による「南区人権啓発講演会」が11月16日にみなみん(南公会堂)で行われた。キクチさんは、命の危険を感じた自身の体験を語り、誰もが被害者、加害者になり得る現代のSNSの使い方について警鐘を鳴らすのと同時に、「ネットでの誹謗中傷をなくしたい」と訴えた。
講演会は人権について考えてもらう機会を提供するため、毎年、南区役所が企画して行っているもの。
突然「殺人犯」に
講師のキクチさんは1999年、インターネットの掲示板に過去に起きた殺人事件の共犯者だという事実無根の書き込みをされた。その後に誹謗中傷や脅迫、仕事先への嫌がらせなどが続き、本人が否定し続けても中傷は止まず、殺害予告の書き込みもあった。2009年に脅迫などの容疑で数人が立件されたが、今でも中傷が続いている。
講演会ではこれらの経験を時系列で説明。中傷が始まったころは、対象は自身だったが、次第に身近な人に危害を加えることを予告する書き込みが目立ち、08年になって警察に相談した。しかし、警察では「ネットの書き込みを信じる人はいない」「しばらく様子を見ましょう」など、正面から対応してもらえなかった。この経験から「誰かに中傷されるより、助けを求めても助けてくれない方が怖いと感じた」という。
対処法も説明
その後、インターネットに詳しい警察官に巡り合い、本格的に捜査が始まり、立件につながった。その際も中傷が書き込まれた掲示板の該当部分を印刷し、段ボールで何箱にもなる「証拠」を提出したからこそ警察が動いてくれたと説明。このことから、自身がネットで中傷などの被害に遭った場合の対処法として「画面をスクリーンショット(写真で撮影するように保存する)しておく」「書き込まれた日時が分かる形で記録、印刷する」ことを勧めた。
「隣にいるような人」が
警察の捜査によって書き込みをしていた人は、主婦や有名大学の職員などであることが分かった。キクチさんは「自分の隣にいるような人が書き込んでいる」と特別なことではないと強調。今では多くの人が利用するツイッターもリツイート(他人の投稿を広める)によって、誤った情報を拡散させることがあり、「リツイートは元の投稿者の『連帯保証人』になったと思った方がいい」と指一本の操作が他人を傷付ける可能性があることへの注意を呼び掛けた。
ほかにも、SNSで受けた中傷がきっかけで自らの命を絶った人のケースを紹介。「スマートフォン一つで人が死んでしまうこともある」と大人は子どもに使い方や危険性をしっかり教えるべきだとした。最後に「誹謗中傷をなくしたい」と強く訴え、約1時間半の講演を締めくくった。
南区版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|