性暴力を受けた被害者(サバイバー)の団体「STAND Still」による「性暴力サバイバービジュアルボイス写真展」が9月2日から16日までフォーラム南太田で行われる。写真を通して自身と向き合い、安全・自由に表現できる場を作ろうと企画されたもの。性暴力に対する社会的関心が高まる中、団体側は「被害者が頑張って声を上げなくても支援が受けられる社会を目指したい」と話す。
「STAND Still」はフォトジャーナリスト・大藪順子さんの団体「Picture This Japan」が2019年に始めたワークショップの参加者によって20年に作られた団体。大藪さんは設立後も講師として活動に携わる。
性暴力やハラスメント被害をSNSなどを通して公表する「#MeToo運動」が世界的に広がる中、「#MeToo」と言えない、言わない選択をしているサバイバーが、安心・安全、自由にその思いを写真をツールにして可視化し、表現しようと活動している。東京や大阪などで写真展を開き、フォーラム南太田での開催は21、22年に続いて3回目。
団体には現在、20代〜60代の15人が所属。今回はメンバー9人と大藪さんの作品を合わせた20点がフォーラム南太田1階のミニギャラリーに展示される。
過去の体験を消化
団体代表のリーナさんはワークショップに参加した理由を「被害体験に関する思いを言いたい、声を上げたいという気持ちはあったが、顔を出すのは難しい。写真なら表現できるかもしれないと思った」と振り返る。「自分の被害体験につながるようなことに出会うとその時にとどまれず、分からなくなることが多くあった。しかし、静止画である写真を通して、その瞬間にとどまり、自分と向き合い、対話を続けられた」といい、撮影や作品選びが過去の体験を理解し、消化するプロセスとして重要なものだったという。
長期の心身不調も
団体の中には今でも30年以上前の被害に苦しむメンバーもいる。リーナさんも心身の不調で社会生活を送れない時期があるが、「ほかの人と同じように笑ったり、楽しむ時もあり、多くのサバイバーは市民としての側面を持って生活している」と話し、「被害者像がステレオタイプ的に語られることが多いが、一人ひとりは唯一無二で多様性がある」と力を込める。
「頑張らず、普通に支援を」
SNSなどで当事者が性暴力の被害を訴えたり、有名人の性加害・性被害が報じられることも増え、性暴力に対する理解は進んでいるように思える。しかし、リーナさんは「加害者が100%悪いという認識を持つ人は増えたが、依然として被害者に対する先入観や偏見はある」と感じる。被害者への誹謗中傷などの状況は「なかなか変わらない」とみている。
団体は「偏見や思い込みで出来上がった性暴力サバイバーへの固定観念を変えるきっかけを作りたい」と社会問題解決の糸口を示そうとしている。講師の大藪さんは「被害に遭ったことを言葉にできない、したくないという思いを説明できない人もいる。そうした人にとって相談窓口はハードルが高い」と考察。さらに「被害の影響が長引く人が多いのは、加害者の多くが逮捕されない、逮捕されても刑が軽いという現実がある」とし、「被害者が頑張って声を上げなくても普通に支援が受けられるよう、支援のあり方も多様であるべき」と語る。
写真展は9月2日から16日の午前9時から午後9時(2日は午後7時から、16日は午後4時まで)。問い合わせは同団体のサイト(https://standstill.jimdofree.com/)から。
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