横浜市は「特別自治市」の実現へ向けて6月5日、区のあり方や住民自治に関する基本的な方向性を公表した。この中では区長の権限強化や住民が区政参画しやすい区単位の協議会設置が盛り込まれ、区の役割拡充や住民自治を制度的に強化する方針が示された。
市は二重行政の解消による効率的なサービス提供や人口減少による財源不足の解消などを目的に、市政に関する仕事と税財源を県から譲り受ける特別自治市の実現を目指している。国の仕事以外は全て市が行い、市域内の地方税を市が徴収する想定だ。
総理大臣の諮問機関で地方制度を検討する第30次地方制度調査会が2013年、特別自治市創設の意義を明確に示した答申を出した。この中では「何らかの住民代表機能を持つ区が必要」と課題も指摘された。
区の役割拡充
これを受けた市は今回の方向性で、特別自治市が実現した際に事務処理量が増えることに伴う区長の権限強化を検討するとした。同時に、市民が取り組む地域活動の支援や市民の声を施策に反映させる仕組み作りといった住民自治の制度的な強化策も必要とした。
強化策は【1】地域主体で連合町内会や各種団体など、既存の組織が連携して課題解決に取り組む場を作る【2】行政が区民の声を区政に反映させるための「横浜版地域協議会」(仮称)を設ける【3】区政のチェックや意思決定に区選出の市会議員が関わるようにする――の3点。市内ではこれまでも地区懇談会や区民会議などを通し、区政への住民参画が進められてきたが、区民が意見を表明するだけで形骸化しているという指摘もあり、協議会設置で、参画を制度化するねらいがある。
南区では連合町内会ごとに住民と行政が地域課題について話し合う地区懇談会が40年以上開かれているが、住民と行政の意見交換の場の意味合いが強い。
二重行政の懸念も
しかし、住民主体の【1】と行政が設置する【2】は目的が異なるが、構成が似たメンバーになることが懸念される。また、連合町内会など、既存の組織との整合性、協議会の意見の区政への反映方法など課題も多い。地域協議会の位置付は条例で定めるとされているが、ある市議は「市と区の二重行政を生むおそれがある」と懸念する。
法改正へ高いハードル
特別自治市の実現には地方自治法の改正が必要。市は国に働きかけを強めながら、市民に特別自治市の必要性を訴えてきた。市政策局の小林一美局長は「(実現への)岩盤は相当厚い」と話すように、法改正への見通しは立っていない。同局は「市民にとって必ずメリットがある」と粘り強く働きかけを続ける考えだ。
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