伝統工芸「下野人形(しもつけひとがた)」の作り手としてその普及に取り組む 高橋 美佐子さん 峰沢町在住 86歳
幸せへの願いをこめて
○…和紙を使って作られる栃木県の伝統工芸「下野人形」。その制作者を名乗れる家元代理として数多くの作品を生み出す他、講師として後進の育成にあたる。
○…元々洋裁が趣味だったが、紙人形の魅力にとりつかれ、40年ほど前から制作を習い始めた。専用の和紙をしぼり、着物や帯、日本髪などを美しく作り上げていく。凝り性の性格から「より人間らしいものを」と追求していった結果、首の細さや髪の毛の1本1本にまでこだわった現在の形が完成。その繊細な出来栄えが評価され、家元代理として認められた。現在は週1回教室に足を運び、その技術を伝授。人形1体をひとりで作れるようになるまでに年単位の修業が必要なため、後進を育てるのには苦労も多いが「伝統の技術をぜひ生徒さんに継いでもらいたい」と熱心に指導を続けている。
○…アレンジで表情をつけてみることもあるが、本来は目や鼻がついていないのが特長。外国人の見学者などになぜ顔が無いのかと聞かれることも多いというが「そういうときは、『ご自分の好きな人の顔を想像して鑑賞して下さい』と説明しますね」と粋な答えが返ってきた。
○…海外での展示会に出品されるなど、作品には定評があるが「趣味でやっているだけだから」と販売や作品展の開催はしてこなかった。だが先日知り合いに勧められ、地元住民向けの小さな個人展を開いた。作品に見入る来場者を見ながら「できあがってもずっと家に眠っていたけど、みなさんに喜んでもらえるのは良いものですね」と嬉しそうに目を細めた。
○…古くから”幸せを呼ぶ”と伝えられる下野人形。1体が完成するのに2、3カ月を要するため、最近では新作の数は減ってきたが「色々な人の幸せを願いながら作っています」と微笑む。1つひとつの人形から感じられる温もりの秘密を、その優しい笑顔の中に見つけた気がした―。
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