すべてが流されたこの景色をずっと見てはいられない。物資ではなく、花や緑がほしい――。
昨春、家を流され、仮設住宅で暮らす宮城県南三陸町の被災者のそんな言葉から、人が集まり交流できる「コミュニティーガーデン」プロジェクトは始まった。
動き始めたのは横浜市泉区を拠点に市内外で活動する、NPO法人日本園芸療法研修会(澤田みどり代表)の有志。会員で区内小野町在住の谷知(たにち)美和子さん(60)も参加した。
「園芸療法」は植物に触れることで心を癒すなど、リハビリに応用するもの。「ガーデン作りに合うのでは」と、会員が知人から提案を受け、昨年4月、現地へ足を運んだ。
基礎に花壇や砂場
場所は津波被害を受けた家の跡地。国から再建のための補助金を得るには、家の基礎を残す必要があり、そのまま利用した。
参加者は仕事があるため、現地での作業は2カ月に1度。金曜日の夜に現地に向かい、日曜日の夜に戻ってくる強行日程だ。子どもや高齢者でも作業がしやすい高めの花壇や果樹園、砂場、デッキなど、短期間で集中的に作り上げた。「土を掘るたびに割れたガラスや生活用品が出てきた。でも、塩害に負けず芽吹く植物の姿もあった」という。
すべて完成したのはコスモスの花が咲く9月末。「早速子どもたちが砂場でお団子を作って遊んでくれて。きっとこの先も遊びに来てくれる、大人もここへ来て笑顔になってくれるはず」
移転の危機に被災者が奔走
しかし完成から間もなく、町の復興計画により建築物の撤去が決まり、ガーデンは移転を余儀なくされた。この時、即座に対応ができない同会に代わり、動いてくれたのは被災者だった。工事の先延ばしを役場に交渉し、移転先探しに奔走。ガーデンは近隣の施設など数カ所に無事移転できた。谷知さんは、「咲く期間は短かったけれど、花の種が飛んで行って、別の場所でまた花を咲かせてくれると思いたいですね」とガーデンを花に例える。
同会は今後もニーズを聞きながら、花を使った作品作りや収穫パーティーなど、活動を継続していく。
鶴見区版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
|