特 別インタビュー 消費増税の影響とは 商大・伊藤穣教授に聞く
消費税率が2014年4月1日から5%から8%へ引き上げられる。増税はどんな影響をもたらすのか。経済政策論などを研究している横浜商科大学商学部の伊藤穣教授に聞いた。
消費税率の引き上げは、年金や医療などの社会保障費の財源を確保するために実施される。
日本の社会保障制度は、健康保険や年金などの社会保険を活用して国民の健やかな生活を保障する制度。社会保険は、万が一に備えサラリーマンや自営業者などの現役世代が中心となって保険料を出し合い、病気などのリスクに遭遇した人に対し、必要な費用やサービスを提供する仕組みだ。
急激な高齢化で社会保障費は年々増加し、財源は不足している。同時に少子化が進んだことで現役世代は減り、「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」という社会保障制度を将来も維持できなくなる可能性がある。こうしたことから国は、誰もが行うモノやサービスの購入に課税される消費税を増税し、幅広い世代で負担を分担。世代間の偏りを解消しながら財源を確保しようとしている。
伊藤教授は、「世代間で負担を分担すれば、現役世代の負担が軽減されるので、増税は現役世代に有利な政策と言える」と評価する。鶴見区を見ると、労働力の中核となる生産年齢人口(15歳〜64歳)が、人口の67・9%を占め、その数は横浜市の65%、全国の62・9%を上回る。そのため、鶴見は増税に有利な現役世代が多い地域と言える。
一方で、「高齢者や、低所得者層の生活には打撃になる」と伊藤教授。「低所得者層などに対する支援策も合わせて打ち出していく必要がある。具体的には生活保護を手厚くしたり、いずれは軽減税率の導入も検討していくべきだろう」と進言する。
増税により、家計への負担増は確実だが、今後消費の動向はどうなっていくのか。「増税前は生活用品の買いだめや高額商品の先買いなど、駆け込み需要が増える。その反動で増税後消費は一旦落ち込むが、すぐにそれまでの生活水準を下げて消費を継続することはできないことが予想され、しばらくは消費はそれほど削らず、貯蓄を減らしていくと考えられる。しかし、将来的に貯蓄不足が生じれば、消費は削られていくだろう」とみる。
消費の落ち込みなどの影響を和らげようと、国は経済対策を打ち出している。具体的には、企業向けが主で、賃金を上げた企業の税を優遇する制度の拡充や、設備投資を促す減税策などを盛り込んでいる。東日本大震災の復興財源にあてる特別法人税も13年度末の廃止が検討されている。
「減税によって企業の収益が拡大されれば、従業員の賃金上昇や雇用拡大につながる。税金の安い海外へ移転しようとしていた企業を食い止める効果にも期待できるだろう。鶴見区は工場の多い工業都市なので、地域の雇用や所得増加に結び付く可能性もある」としている。
減税で企業支援消費は減退現役世代に有利社会保障財源を確保
能登半島地震 横浜市の募金額は5528万円4月30日 |
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