鶴見区の県立三ツ池公園で毎日、午前6時から行われているラジオ体操。70から90歳までの70人ほどが集まる場の先頭に立って講師を務める伊藤新さん=同区在住。
NPO法人全国ラジオ体操連盟の講習会に参加し、指導員の資格を持っています。「講師になるということは、左右逆で体操ができないといけなくて、結構難しい。もう慣れちゃったけどね」と茶目っ気のある笑みを見せます。
大怪我きっかけに
ラジオ体操の魅力に気付く契機となったのが、18年前に負った大けが。ひざの皿が何枚かに割れたといいます。その頃、広告会社で働いていた伊藤さんは、その状態で会社の会議に出席。後に、病院に通い、自分の状況を知ったといいます。「動くと痛かったけれど、まさかこんなことになっているとは思いもしなかった」。
翌日手術をし、半年間は松葉杖の状態に。「だいぶ筋肉が落ちていて、このままでは歩けなくなると確信した」と言います。リハビリがてら三ツ池公園を歩いていた時、ラジオ体操の音楽が聞こえてきました。
初めは大きな音だと思う程度でしたが、毎日行われるそれを見て、一度やってみようという気持ちになり、輪に入れてもらいました。実際に行ってみると、簡単だと侮っていた動きが難しく、全然できなかったそうです。周りを見ながら、動きについていくので精一杯。
翌週、公園に行くと大勢の人が集まる場で、自分のスペース分が確保されていました。「自分の分が空いていると思ったら、やらなきゃと感じて」。
手のひらをグーにするか、パーにするかなど、細かいところまで理屈に合っている完璧な動き。ちゃんと動くと汗もかく。どんどんハマっていきました。「いくつになっても新しいことを身につけるのは面白い」。
若さの秘訣
早朝4時半からウォーキングし、ラジオ体操に参加した後も、伊藤さんの日常は忙しいです。多文化共生のまちづくりの拠点となる国際交流ラウンジでコーディネーターとして様々なイベントを企画する傍ら、大学で事務仕事に勤しんでいます。
きっかけは、興味を持って同ラウンジのボランティアとして参加したことでした。大学の仕事もそこでの出会いがつながりました。「知らないことや、見たことのないものに惹かれる」とその好奇心の強さが垣間見えます。それが若さの秘訣のようです。
今でこそ、健康で充実した毎日を送る伊藤さんですが、現役時代はタバコやお酒が大好きで、生活はめちゃくちゃだったといいます。「景気がどんどん良くなっていく時期で、当時は今と違って将来について不安もなく、あまり考えなかった」と笑います。「でも今は当時とは違うからね」。
ラジオ体操は雨でも台風でも、雪でも毎日行われます。「体操に来ている人は、みんな元気。継続が力になっているのだと思う」。今では参加者のほとんどが知り合いです。「こういったつながりが元気の源にもなっているのかも」。
やりたいと思っていたことを始め、その魅力を味わい、人とつながっていくことの大切さを教えてくれました。