津波や帰宅困難者など、多くの想定外が発生した東日本大震災。その教訓は防災・減災意識の土台となっている。今年、そこにコロナが加わった。「震災は転換期となる大きな出来事だった」とする区危機管理・地域防災担当に、今後の防災について話を聞いた。
キーワードは「分散避難」
「東日本大震災の教訓が土台」と語るのは、震災当時、119番通報を受信する指令センターに勤務していたという鶴見区危機管理・地域防災担当の向井正臣さん。
向井さんは発生当日、夜勤に向かう電車の中で被災。徒歩で到着したセンターでは、電話が鳴りやまない状況が続き、通報記録を保存するサーバーがダウン寸前だったという。
「仮に震源地だったらダウンしていた」と向井さん。震災後は、容量を増やし改善が図られた。
市は震災後すぐに防災計画の修正に着手。2年後に公表した。最も被害が大きいと予測した元禄型関東地震を含め、発生する可能性のあるさまざまな地震をもとに、対策を想定した。
震災以降も、二度の震度7を観測した2016年の熊本地震をはじめ、台風や豪雨水害など、様々な自然災害が発生。そのたび、行政の計画はもとより、人々の意識も修正されている。
家族、友人などコミュニティで
災害の種類、想定も出そろったかに思えたが、今回「コロナ」という新たな脅威が生まれた。
区によると、地域防災拠点となっている小学校の体育館には、一人あたり2平方メートルとして200人〜250人が入る計算としている。だが、コロナ禍、区内の拠点で実施された訓練では、ソーシャルディスタンスを保った場合、70人が限度だったと明かす。
そのため今後は、「在宅避難」や「分散避難」を推進したい考えだ。そもそも地域防災拠点は、避難者全員を受け入れるキャパシティーを有していない。「安全なら自宅にとどまるのが最適」と向井さんは説明する。
「家族はもちろん、仲のいいご近所、ペットの飼い主など、コミュニティの中で避難場所を確保するのもいい」。3密を避けるだけでなく、まず小さなコミュニティで助け合い、拠点エリアでの共助につなげていくことで、地域の防災向上にもつながると指摘する。
一方で、拠点でないと物資がもらえないなどという誤解を解いていく必要性も訴える。「在宅避難でも問題ない。避難者カードを書けば、情報を全国に発信することなどもできる」とし、今後は在宅や分散避難などとともに周知していく考えを示している。
震災を土台に、コロナ禍を加えたハイブリッド型の防災・減災対策を考える時期が来ている。
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