鎌倉のとっておき 〈第116回〉 武士の魂、鎌倉に宿る
刀(剣)といえば、天皇家に伝わる「三種の神器(じんぎ)」の中の「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」がよく知られるが、「武士の魂」といわれた日本刀の名刀「正宗」は、鎌倉生まれの芸術的な逸品である。
刀剣は、古墳時代(3〜6世紀)の墳墓からも数多く出土しているが、当時の刀剣は、武器であるとともに、装飾品としての位置づけも色濃かったようだ。
平安後期から鎌倉期にかけては、貴族から武士の世へと変革する中、戦(いくさ)の形も馬に乗りながら弓で射合う騎射戦から、徒歩にて戦う徒戦(かちいくさ)へと移行し、武器としての刀剣の需要は大いに高まっていった。
こうした中、鎌倉幕府は、山城国(京都府)などから刀工を招き、刀剣づくりに力を注いだため、鎌倉は刀剣の一大生産地となった。特に、鎌倉期末の刀工、五郎入道正宗は、鎌倉で地鉄(じがね)(刀身の素地)の美しい「相州伝」という作風を完成(「正宗」を製作)させた名工だった。
また、刀剣づくりには、良質な原材料(鉄)が必要だが、日本の渚百選にも選ばれた七里ヶ浜は、砂鉄を多く含んだ砂浜であることから、この渚が鎌倉の刀剣づくりを支えたのではないかともいわれている。
現在、五郎入道正宗から数えて24代目の山村氏は、鎌倉期からの伝統芸術を継承し、古(いにしえ)より「先を切り開く」といわれる刀剣や包丁などの刃物や鉄工芸品を「正宗工芸」として世に送り出し、その作品は多くの人々に愛されている。 石塚裕之
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