鎌倉のとっておき 〈第124回〉 古都からの見晴らし
豊かな自然環境に恵まれた鎌倉では、人々を魅了する美しい風景を目にすることができる。
まず、鎌倉文学館からの眺望。鎌倉文学館は、旧加賀藩16代当主前田利(とし)為(なり)により建築された別荘建築の代表的な建物だが、2階テラスからは、緑の絨毯(じゅうたん)を敷いたような明るい庭園の向こうに、青く煌(きら)めく相模湾を望むことができる。
次に、成就院からの眺望。成就院は、1219年3代執権の北条泰時が北条一族の繁栄を願って創建し、今や縁結びでも有名な寺院である。長谷方面に下る坂道からは、街並とそれを囲む緑の山々、そして材木座から由比ヶ浜へと大きく弧を描く白い渚と、海の青さが見事に調和する絶景を望むことができる。
そして、稲村ヶ崎からの眺望。ここからは、「日本の渚百選」にも選ばれた七里ヶ浜の白波と江の島とが重なり、その後方には箱根山塊や遠く富士の峰をも抱く、湘南の海を代表する絶景を望むことができる。特に、冬晴の夕刻、江の島灯台に明かりが灯る黄昏(たそがれ)時の風景は、息を呑むほどの美しさである。
このほかにも、天園ハイキングコースの途中、十王岩付近からの眺望や、4代執権の北条経時(つねとき)が開いた浄土宗の大本山、光明寺(材木座)の裏山からの眺望も、稲村ヶ崎からの眺望と同様に「かながわの景勝50選」に選ばれた絶景である。
風光明媚な古都鎌倉は、訪れる人々の心に想い出の一頁を残してくれるまちである。石塚裕之
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