関東支部代表として全国消防職員意見発表会に出場する 尾崎 裕太さん 鎌倉市消防本部勤務 28歳
共感と想像力で命救う
○…鎌倉を訪れた観光客が急に具合が悪くなったとき、周辺の商店や飲食店が応急処置のできる「救急駆け込み寺」になれば―。観光地ならではの課題に向けた自らのアイデアを5月23日、全国から集まる消防職員の前で発表する。「自分の思いを多くの人に届けたい」と意気込みを語る。
○…「駆け込み寺」の発想は、昨年まで勤務していた由比ガ浜にある鎌倉消防署での経験が元になっている。体調を崩してパニックになり、「とりあえず救急車を呼んだ」というケースをいくつも見てきた。「土地勘のない場所で何かあったら、どうしていいか分からなくなる。自分が同じ立場だったら、と考えました」と話す。
○…横浜市出身。消防職員を志すきっかけとなったのは大学3年生の終わり、ある夜の出来事だった。終電間際に横浜駅を利用した際、駅舎でぐったりしている人を見かけた。「最初は酔って寝ているのだろうと思ったが、もし本当に具合が悪かったら、という考えが一瞬頭をよぎった。それでも『自分には何もできないから』と通り過ぎたんです」。しかし、この出来事が頭から離れなくなったという。「その時ちょうど就職活動中で色々な企業を見ていたけれど、どれもしっくりきていなかった。だったら人の命と向き合う救急隊員になろうと決心しました」。その後1年の試験対策期間を経て、2010年に市消防職員としての一歩を踏み出し、災害対応など最前線で活動してきた。
○…日々の息抜きは音楽。高校2年生から始めたギターは作曲をするほどの腕前で「自室は楽器で一杯です」と顔をほころばせる。現在は大船にある鎌倉市消防本部の警防救急課に勤務。消防隊・救助隊・救急隊のバックアップを行っている。「現場と市民を繋ぐポジション。多くのことを吸収しつつ、スピーチ内容の実現に向けて努力していきたい」。相手を思いやる強さで、この街を守っていく。