着付師として国の表彰する2015年度「現代の名工」に選ばれた 和田 由紀子さん 富士塚在住
家庭と仕事、両立が信条
○…美容師・着付師としてのキャリアは60年を超える。各業界で活躍した技能者に国から贈られる誉れ高い賞に、「長年の苦労が報われた思い」と笑みがこぼれる。2015年度の受賞者は全国で150人、県内では10人が選ばれた。過去に花嫁への化粧・着付の技術を競う大会で日本一に輝いた受賞歴や、新しい帯結びの創作、指導者としての後進育成などが評価された。「電話で第一報を聞いたときは驚き、息子からのお祝いメールには涙が出た」と声を弾ませる。
○…幼少期の記憶に残るのは、3歳のとき、美容師だった母親の隣で見よう見まねでマネキンの髪を結っていたこと。18歳で美容師となり、平日は仲手原にある母親の美容院を手伝い、土日は市内の婚礼会場に出張する日々。1人の花嫁で5度お色直しをすることもあり、3人がかりで花嫁の着物を脱がせ、和髪カツラから洋装用のアップヘアにしたこともあった。「与えられた時間が20分だったことも。戦場のような舞台裏も今では良い思い出。”短時間で美しく仕上げる”技術が身に付いた」
○…日本最大の競技大会「全日本美容技術選手権大会」の花嫁化粧着付競技の部で優勝したのは89年。出場を目指して約10年、3度目の挑戦だった。心に誓っていたのは「家族には迷惑をかけない」。毎朝、夫と小学生の子ども2人を送り出すわずかな時間を見つけてマネキンの髪を結い上げた。練習も家事も妥協を許さないのがプライド。「家族がいたおかげでここまで成長できた」と誇らしげだ。
○…市内などでプロ向けの着付教室を開いている。常に大事にしているのは「遊び心」。日本古来の着物の伝統や魅力を守りつつ、赤いレースやファーを使った斬新な色打掛を考案したこともある。「基本を押さえた上なら、遊び心はあってもいい。美容師なら、常に新しいものに寛容じゃなくちゃ。これからも一瞬一瞬を大切にしていきたい」
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