8月17日まで伝統工芸・神奈川会展を開催中の日本工芸会 神奈川研究会会長 斎藤 孝子さん 富士塚在住 79歳
伝統工芸の技術、次世代へ
○…横浜高島屋の美術画廊での工芸作品展は2度目の開催。以前は鎌倉芸術館でも行っていたが、「若い人や一般の人に広く作品を見てほしい」と一昨年現会場に。「今年は五輪もあり、来日する外国人の方々にも日本の伝統工芸の技術を見てもらえるよい機会だったのに」と残念がる一方で、コロナ禍の難しい時期を「こんな時だからこそ、ゆったりと身近な自然に目を向けて、柔らかな心で創作を続けてきた」と振り返る。
○…自身の専門は「型絵染」。着物を仕立てる前の反物を染めるものだが、自分でデザインした図案の型紙を自ら彫り、糊を置き、染める工程を一人で行う。「小紋など従来の型染は、それぞれの工程に職人がいるが、自分は全てを一人で行う手法に惹かれた」。完成には3〜4カ月ほどかかり、今も年に3作品は、日本伝統工芸展などに出品する。モチーフは植物をスケッチし、考えることが多い。繊細に彫られた型紙はそれだけで芸術作品だ。「この手法は頭も手足も使う。だからこの年まで病気もせず元気なのかも」とにっこり。
○…板橋区生まれ。絵を描くのが大好きで東京芸大卒業後は染物工房に就職した。結婚し染色作家としての独立を経て、もう一度勉強したいと芸大の研究室に。その後は講師として定年まで勤め上げた。いつも染色のことが頭にあり、海外旅行も全て現地の染や織を見るため。「手織り絨毯のため行ったアフガニスタンでもソ連侵攻前の不穏な空気は感じたけれど、夢中だったから」
○…優しく見守ってくれた義父母や夫は約30年前に他界。今は、染を教える20人超の生徒も張り合いの一つ。教え子の作品入賞を我がことのように喜ぶ。「日本の伝統技術、絶やさず伝えていきたい」と眼を輝かせた。
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