画業70年をまとめた「人生の詩・今を生きるIII」を上梓した 荒井 茂雄さん 高田東在住 99歳
ものの見方が人をつくる
○…26歳の時、師である画家、猪熊弦一郎氏が主宰する「田園調布純粋美術研究所」に入所してから70余年。1948年の新制作派協会展に初出品、初入選以来、毎年さまざまな展覧会に出展し、初期は鮮やかな色彩の油彩、70歳を超える頃からは立体作品やコラージュを発表してきた。「次々と新しいことに挑戦することが大事」と年齢を感じさせない、朗らかな声で語る。
○…長野県出身。代々続く養蚕の種屋(蚕卵の生産者)に生まれ、高等小学校(現中学)時代は絵が好きで、友禅と日本画を学んだ。徴兵されるも検査で丙種だったため、戦地には行かず、23歳で横須賀海軍に召集。当時、すでに同年代はすべて出兵。基礎訓練では「周りは皆30歳以上で自分だけ若かったから何をやっても百点満点」で班長付に。気に入られたこともあったのか海軍砲術学校画室に配属となり、そこで終戦を迎えた。「何が幸いするかわからないね」と微笑む。戦後、猪熊氏の弟子となり結婚後に今の地に居を移す。「自然が多く、早渕川でよくドジョウやザリガニをとって。変な人と思われてたかもね」
○…「いつも自分は運がいい、幸せだ」と思うのだとか。「物事の良い面を見てマイナスに考えない」のは、師である猪熊氏の、人としての在り方の影響もある。主宰する絵の会「PAL展」は30年以上続き、今も月1回、生徒10人ほどが各々の描いた絵を持ち寄る。遠方から熱心に通う人も多く、お互いの個性を認め合う場づくりをしてきた証でもある。
○…現在は妻と二人暮らし。真っ白い壁の美しい家は二人で作り上げた。今も「家の中を美しく整えるのが楽しい」と。生きる=芸術、そんな稀有な人生を垣間見た気がした。
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