母乳育児支援コラム1 抱いて、見つめて、話しかけて 保健師 朝倉 きみ子<増える母乳栄養の赤ちゃん>
戦前までは自宅でのお産がほとんどでしたが、戦後の約20年間で病院でのお産が普及し、1970年代には80%を超えました。この時代は母乳栄養児が減った時期と一致します。生後3カ月の母乳育児率は30・3%まで低下しました。
この時代は、産後のお母さんと赤ちゃんは母子別室生活。退院時は栄養士による調乳(ミルクの与え方)指導が行われ、退院のお土産がミルクでした。そのため、母乳授乳の指導はあまりされませんでした。また、3時間ごとの授乳と泣けば安易にミルクを足すという傾向がありました。人工乳をたくさん飲んだ赤ちゃんは、おっぱいをのむ回数が減ります。お母さんの乳房の刺激が少なくなり、母乳の分泌が増えないという悪循環が起こるのです。
10年で環境変化
しかし、この10年間で病院、診療所での取り組みが変化してきました。厚生労働省の調査によると、分娩を行う施設の70〜80%が母子同室を実施し、出産後30分以内に母乳を飲ませ、ほしがる時はいつでも母乳を飲ませています。産後すぐにお母さんと赤ちゃんが同室で過ごすことができるようになり、母乳栄養児の赤ちゃんは約60%(2010年度調査)に増えてきました。お母さんと赤ちゃんにとって良い環境が整ってきています。
母乳育児の基本的な考えは、6カ月までは母乳だけで育て、その後は補完食(離乳食)を食べさせながら2歳あるいはそれ以上、母乳育児を続けることです。これは、WHO(世界保健機構)が推奨している考え方です。世界的には長期母乳継続の傾向が増加しているようです。
一生に一度しかない赤ちゃん時代、お母さんは母乳育児を楽しんでほしいと思っています。
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