日本人形作家の”講師の講師”として、活躍してきた人物が、鶴見区にいる。御年91歳で現役の小池緋扇さん(馬場在住)だ。肩書きは、普及や調査・研究などを進める、国内トップクラスの業界団体・財団法人人形美術協会の本部主任教授。長年にわたり、技術の研究などを行ってきた小池さんの創作意欲は、今もとどまることを知らない。
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昨秋、鶴見区文化協会主催の区民文化祭で3日間開催された特別展。初の凱旋となった展示は、評判が評判を呼び、毎日訪れる来場者もいるほど好評だった。
「色艶や表情、どれも素晴らしい」。そんな声が溢れていた。
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これまで製作したのは130〜140体ほど。絹糸を一本ずつ使う髪の毛から、江戸時代などの古着物で作る衣装まで、そのすべてが手作りだ。
「正確には言えない」とする製作時間だが、例えば表情を決めるという手は、顔料の一つである胡粉を塗る作業に丸2日をかける。濃度を変え、塗り重ねる地道な作業。テーマ通りの手かどうか、常に対話しながらだ。
「気づいたら夜中の2時、3時ということもある」。そう微笑む。
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「教えるのが職務だったから、自分で作品を出すなんて思いもしていなかった」
協会などに人形を見に来る外国人から、いつも聞かれた「江戸の粋とは何か」という問い。女の色っぽさに、男のいなせ――「言葉じゃなく誰でもわかるように残したい」。それをきっかけに、”粋”を託した人形を作り始めた。
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上まぶたの切れ込みに、紙に付けたまつ毛を入れるなど、新たな技術も生みだしてきた。
納得のいくまで作り込むのが信条。「一日置いて、朝起きたときに人形が笑っていたら完成」。
テレビや雑誌、いたるところからインスピレーションを受ける。今も4体に着手中で、頭の中には順番待ちのアイデアが満載だという。
夢は来年の東京五輪・パラリンピックで、自身の人形が活躍すること。「世界中に江戸の粋を知らしめたい」。指の先まで、その思いを託していく。
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