「ダゲレオタイプ」という写真技術で撮影を続け、日本写真協会賞新人賞などを受賞した 新井 卓(たかし)さん 北見方在住 37歳
「なぜ撮るか」問いながら
○…「ダゲレオタイプ」と呼ばれる、19世紀前半に生まれた銀板に画像を写す技術を使い、核の被害を象徴する国内外のモニュメントを撮り続けている。米国の核実験場、第五福竜丸の船体、広島の原爆ドーム――。クリアな画像になって銀板に写る。昨年発表した写真集が評価され、第41回木村伊兵衛写真賞、日本写真協会賞新人賞を受賞した。「実感はないが、親や周りの人に報告できる評価をもらえて良かった」と静かに語る。
○…大学時代に写真と出合い、写真の原点を探るうちにダゲレオタイプを知る。大学を中退して写真の専門学校に通い、試行錯誤しながら技法を習得した。露光時間は10分〜1時間と非常に長く「時間をかけて自分が感じたスケールをそのまま写せる」感覚が魅力という。卒業後は広告会社に勤務したが過労で倒れてしまう。その時に考えた。「自分は何を撮りたいのだろう?」。人に言われて撮るのではなく、自分の写真を作品にしたい。退職して己の道を模索する道を選んだ。
○…当初は身近な人々のポートレート写真を撮っていたが、やがて「自分の写真は社会でどう生きるのか」と考え、自分が見て感じた「現代の問題」をテーマに撮影をするようになる。その中でも、2010年に第五福竜丸と出合って以来「核」に興味を持ち、東日本大震災発生後の福島第一原発を海上から撮影するなどして被害の実相を人々の心に訴えかけている。「人に頼まれもしないのにやるのが芸術だけど、なぜそれをやるのか、自分の心に問わないといけない。それが責任」。
○…福島や海外に撮影に出かけることが多いが、自宅に滞在している時も撮影を日課にし、地元の公園などでカメラを構えている。気晴らしに料理をすることも多く「後腐れがないから好き」と笑う。今後は映像の分野にも挑戦しながら、現代の問題を訴えていくつもりだ。
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4月26日