創刊15周年を迎える雑誌「arc」で編集長を務める 東郷 禮(れい)子さん 千年在住 71歳
執筆に込める強固な意志
○…「世界のグランドデザインを読者と共に構想できる雑誌をつくりたい」と2001年に友人と出版社「レイライン」を設立。翌年、雑誌「arc」を発刊し、今年で15周年を迎える。
〇…政治や宗教にとらわれず、毎号自分たちが決めたテーマで特集を組み、取材対象者に手紙を送って直談判するのがこだわりだ。「誰でも臆することなく話を聞きたいと思った人物に依頼する」がモットーで、国外ではヒラリー・クリントン氏やマイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏にも何のつながりもない中で取材を依頼してきた。「ヒラリーは実際に許可がおりたのよ。最終的に時間の都合で紙面に登場できなかったけど」と白い歯を見せる。
〇…生まれは山形県。小学校入学時に川崎へ。大師河原の殿町小学校から大師中学校に進み、県立川崎高校へ。幼い頃から本の虫で、文学書や哲学書が好みだった。「父に連れられて山谷のドヤ街に行ったり、小さい頃から社会のいろいろな面を見てきたから当時から問題意識は高かった」。そんな中、転機となったのは高校2年の秋。ヘルマン・ヘッセの人生観、哲学に触れ、「ベルトコンベアーのような人生は自分に相応しくない」と一念発起。高校を中退し、500円の所持金のみで2年間の全国放浪の旅へ出た。住み込みのバイトで旅費を稼ぎ、時には神社の軒下で寝たり、着ていたコートを500円で売ったことも。「でも、辛いことはなかった。何より、どうやっても生きていけるという自信がついた」と事もなげに笑う。そして放浪の旅から戻ってからは働きながら執筆活動に本腰を入れ、24歳の時に『つちかわれた狂人』でかわさき文学賞を受賞した。
〇…その後57歳で出版社を設立するまでは長い葛藤の時期だった。「でも、私は自分が納得できない生き方はできないから。意志強固ね」。その生き方が雑誌「arc」の誌面によく表されている。
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4月26日