経済的な理由などで生理用品を購入できない「生理の貧困」が、コロナ禍で浮き彫りになっている。教育現場でも児童・生徒の支援のため対応が模索されており、県立大師高校(川崎区)では県教育委員会のモデル事業指定校として、試験的にトイレにナプキンを設置。一方、川崎市教育委員会は、子どもとの対話の機会にしようと従来の保健室配布を継続している。
県教委は生徒の実情やニーズの把握を目的に、今年6月から今月末まで県立12校でトイレにナプキンを設置。市内は大師高校のみで、全女子トイレに常時20〜30個を置いている。同校に通う女子生徒は271人。夏休み前までの2カ月弱で421個使われたという。鈴木史人教頭は「地域特性もあり、家庭環境に課題を抱える生徒が多い。総合的に支援していく上で新たな視点になった」と話す。県教委は生徒を対象に利用状況や利便性についてアンケートを行った。集計結果をもとに、今後の対応を検討する。
市、保健室で配布
トイレへの設置は気軽に利用できる一方、貧困に苦しむ児童・生徒を把握しにくいという課題も。市教委は市立小中高において、従来通り保健室で手渡す方法にこだわる。「養護教諭と対話する機会とし、課題があれば適切な支援につなげたい」と担当者。今後も貸与という形は継続するが、返却は無理強いしない方針にしたという。
市民団体や市議会議員からは、トイレへの設置要望が市教委に寄せられている。市議の一人は「女性にとっては必需品で、トイレットペーパーのように無償で手に入るべき。単なるコロナ対策ではない」と指摘。4月に要望書を提出した新日本婦人の会川崎7支部連絡会のメンバーは「生理は隠すことではないし、保健室に何度も行くのは不便。支援を考える機会にしてほしい」と話す。
世代問わず望む声
川崎市社会福祉協議会の相談窓口には、学生に限らず幅広い世代から生理用品の無償提供を望む声が届いているという。「相談数は数えていないが肌感覚としては、コロナ禍での失業や収入減を受けて増えている」と担当者。現在は、地元企業の協力でナプキンを無償提供している川崎市男女共同参画センター(高津区)を紹介しているが、市社協としても支援を検討する方針という。
川崎市では民間企業の協力を受け、区役所や市民館など一部公共施設のトイレにナプキンの無料提供装置を設置する予定。スマートフォンのアプリと連動して使うもので、今月から設置場所の調査を進めている。担当者は「生理の貧困にとどまらず、女性特有の負担を解消するための取り組み」とする。
中原区版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|