3月11日に大倉山記念館で復興応援イベントを行う「紫苑」の代表を務める 渡邊 純子さん 市内在住
地上と天 つなぐ存在に
○…東日本大震災の3日後に、宮城県七ヶ浜町に住む母親の声を初めて聞くことができた。無事を喜んだが、「供え物のお干菓子を食べた」「お刺身が3切れ貰えたの」――被災地の様子を聞く度に、涙を流す日々が続いた。現地に足を踏み入れたのは、1カ月後。テレビからは伝わらない、360度広がる変わり果てた風景に言葉を失った。あれから3年。「忘れてほしくない」という現地の声を届けようと、大倉山で復興応援イベントを開く。
○…「紫苑」の花言葉は「遠方にいる人を想う」。「離れて暮らしていても、想いを寄せていたい」とイベント名にしたという。2012年9月、ボランティアを通して知り合った人たちと、七ヶ浜町で初めて公演を行った。「『やらなければ』という心のままに動いた」と静かに語る。運営も「一方通行にしたくない」との思いから現地の人々と協力。もちろん母親もスタッフの1人だ。昨年は地元の子供たちも出演した。「出会わなかった人と出会えた。この縁を大切にしたい」
○…小6で新体操を始めて以来、「表現すること」を常に追い求めてきた。「なせば成る。なさねば成らぬ」をモットーに、「面白そう」と思えば、迷わず挑戦。布を使って空中演技を行う「エアリアル」も、「最初はまったくできなかった」が、諦めることはなかった。始めてわずか7カ月で、愛知万博の舞台に立つまでになった。「地上で踊るように空中でも踊りたいと思って。負けん気だけは強いんです」と笑う。
○…以前、公演をみた被災者から、「エアリアルは見上げるから、いいですね」と言われた。うつむきがちだった自分に気づかさせてくれたのだという。「エンターテインメントの力は大きいと思う。地上と天をつなぐ存在でありたい」と願う。今はイベントを前に、外を飛び回る毎日。「ぼーっとする時間に罪悪感を覚えてしまう。時間貧乏です」と苦笑いを見せた。