日本自分史大賞で優秀賞を受賞した 土井 隆さん 原宿在住 82歳
人生を見つめなおす旅
○…広島県で芸者をしていた母と父が台湾へ駆け落ちし、非嫡出子として生を受けた。終戦の日を迎えたことで、17歳で日本に帰還するまでの半生を赤裸々につづった自分史「私を探す旅」を日本自分史学会が主催する「日本自分史大賞」に応募。2月15日に優秀賞受賞の連絡を受けた。ペンを握った理由を聞くと「自分の生きた証を残したかった。そして、これを今の若い人に読んでもらい、勇気を出してもらいたかったんだ」。
○…両親は台湾でビリヤード場を経営していたが、5歳の時、母が客と行方をくらまし、両親が離婚。その後、父が婿養子に入り、「女郎の家庭で育てられた。自分は、人とは違う環境で育ったから、考え方も人と違っていて変人なんだよ」と、いたずらな笑顔を見せる。しかし、その過去は、若いころには辛くて語れなかった。今だからこそ語れる物語だ。
○…辛い境遇でも非行に走らなかったのは、読書と夢のおかだげという。中学1年のころには、周囲の友人が揃って兵隊になりたいと言う中、「小説家になりたい」と話していた。両親と一緒に暮らすことができなかった辛い日々も「自分には夢がある」と、希望に支えられて生きてきた。一人で過ごしていた時間も今となっては「たくさん読書をしたり、考えごとができて、結果的には良かったんだね」と捉えている。
○…作家になる夢を叶えたい一心で、20歳の時に東京に行き、仲間と一緒に同人誌「希望」を発行。しかし、2年で廃刊し、住む場所と仕事を同時に失った。新聞配達や旅館の番頭など住み込みの仕事をするが続かず、ごみ箱や道端で新聞や空き缶、靴などを拾って売ることも経験。自殺未遂をするほどに追い込まれたこともあった。それでも忘れなかった「作家になりたい」という夢。今、物語を創作することは、夢を追うと同時に、自分の人生と向き合い己を見つめなおす旅の過程だ。
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4月18日